漢方医学では「〝肝〟は目につながり、〝腎〟は瞳を司どる」と言われ、目のトラブルには五臓六腑に含まれる、〝肝〟と〝腎〟の機能を高めることも重要視される。
「〝肝〟は自律神経の働きと関わり、血の調整をします。このため、ストレスによる自律神経の乱れや、更年期での月経の異常の影響で目の疲れが出現する可能性があります。〝肝〟の異常は〝血〟の滞りや不足が出やすくなります。血が滞れば目の充血をもたらし、不足すれば目の乾燥やかすみが見られるのです」
また、〝肝〟は筋肉の働きとも関係するので、〝肝〟の低下は、目の筋肉の働きの衰えや、首や肩のこりをもたらすことも。一方〝腎〟は成長、発育、加齢に関わる。
「すなわち、老眼による目の疲れは〝腎〟と関係しています。また、内分泌系にも影響を与えるので、加齢に伴うホルモンバランスの乱れによって〝腎〟が弱まると、かすみ目などが見られるようになります」
目疲れの対策や予防に、〝肝〟と〝腎〟を補強する食生活も効果的。
「昔から重用されてきた、〝肝〟と〝腎〟を補うクコの実や、〝肝〟を整える菊花などの生薬を取り入れるのもいいでしょう。また、加齢とともに食べ物を吸収する力が弱まり、食欲が衰える人も多いので、目にいいとされるビタミンを、サプリメントで補うのも賢いやり方です」
といっても、サプリや生薬だけに頼ってしまっては本末転倒。
「漢方医学では食養生が基本であり、それでも不足する分を漢方薬で補うと考えます。ただ、過ぎたるは及ばざるが如しと言うように、何事もほどほど中庸が大切です。」
栄養を摂ることと同じくらい、代謝を司る〝肝〟、排泄を担う〝腎〟を補う食材も大切。漢方医学では酸味は〝肝〟、塩辛い味は〝腎〟を補うと考える。海水と関連する昆布やワカメなどの海藻類は〝腎〟の働きを高めるといわれている。
「目に限らず、全身の老化は誰も逆らえないものですが、加齢によって減少するエネルギーをどのように有効活用すべきか、常に戦略的に対処することがポイント。さもないと、無意識にエネルギーを消費して、自分の老化を早めてしまいます」
老化を緩やかに進行させるには、〝気〟〝血〟の働きを高めるべき。
「人の身体を構成している要素で、〝気〟は生命のエネルギー。不足すると疲労を感じやすく、冷えの原因にも。滞ればイライラや便秘、胸苦しさなどをもたらします。そして全身を巡って栄養を運んでくれるのが〝血〟です。血が不足すれば、めまいやかすみ目、疲れ目、皮膚の乾燥などを引き起こし、滞ると慢性的な肩こり、生理がひどくなったりします。〝気〟〝血〟を補うのは、質の良い睡眠と食生活が何より大事です」
スマホと上手に付き合い、上質な睡眠と食生活を心がければ、老化の加速や、心身のトラブルを防げるようになる。ただ、疲れ目の裏には、背後に違う要因が隠れていることも。
「目が重痛い場合は緑内障で眼圧が上がった影響かもしれないし、かすみ目がひどいときは白内障を疑う必要もあります。さらに、甲状腺眼症や脳腫瘍、糖尿病などによる影響で目のトラブルが起きることも。目はあなたの健康状態を知らせてくれる、大切な器官でもあるのです」