今の医療制度ではかかりつけ医の役割を果たす中小の病院と、高度な治療を受けられる大学病院などの大病院とがそれぞれの役割を効率的に果たすために、紹介状のシステムがある。紹介状なしに大病院を受診する場合は通常の診察料とは別に数千円程度の選定療養費を支払う必要がある。
「かかりつけ医をもっていると、なにか心配な症状があった時に相談しやすく、紹介状を書いてもらうのもスムーズです」と、原田さん。
「現状、さまざまな事情から紹介状なしで大病院を受診する患者も多いです。東京医科大学病院の総合診療科は、微熱が続く、原因不明の腹痛が続く、慢性的に疲労感があるなど、症状があるのになかなか原因がわからないという患者も多く診ています」
「総合診療科」とは最近よく耳にする言葉だが、どういうものなのか。
「総合診療科を設ける大病院が最近ふえています。その診療範囲は病院によって多少違うので、東京医科大学病院の場合について話します。いちばん重要な役割は、患者さん中心に考えるということ。患者さんにとって不快な症状があって原因がなかなかわからない場合に、ていねいな問診をし、原因にあたりをつけて検査をします。その過程で他科に相談するなど連携して治療にあたるのが特徴です」
患者の立場に寄り添って病気の原因を総合診療科の医師が責任をもって探ってくれるというこのシステム、とても魅力的だ。
今まで総合診療科を訪れた患者の症例にはどんなものがあるのか。60代の女性患者が「最近疲れる、だるくてしかたない」という症状を訴えて総合診療科を受診。顔色が白く貧血を疑った。さらに詳しく話を聞くと、10年ほど前に閉経したが最近また生理のような出血があるとのこと。婦人科で検査をすると子宮頸がんが発見された。
70代の女性の例。「疲れやすく、食欲がない、体重も減ってきた」と受診。さらに問診を重ねると、最近引っ越しをして、その頃から症状が出たということがわかる。身体の病気がないか併せて胃腸の検査、甲状腺機能検査をするが異常なし。そこでメンタルヘルス科でも診察を。うつまではいかないが不安感が強いとの診断で、抗不安剤を処方。1カ月後には見違えるほど元気になった。