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新しいことに挑戦し続ける森昌子さん。
「59歳で輝いて60代を迎えたい」

さまざまな困難を乗り越えてきた森昌子さん。59歳を前に、新しいことにも挑戦し続けています。前向きな心の持ち方を教えてもらいました。
  • 撮影・青木和義 スタイリング・平澤雅佐恵 ヘア&メイク・長網志津子 文・石飛カノ

国民的歌手、森昌子さんが20年近く芸能界から遠ざかっていたことを知り、「そんなに歌ってなかったの?」と、驚く人が少なくない。それほど〝歌手・森昌子〟の存在感は大きい。引退後の20年間は主婦業に全力投球、3人の息子の育児に専念した。離婚を経て再デビューしたのが2006年。

「生活していくには私が働かなければなりません。お花屋さんかおばんざい屋をやろうかとも思いましたが、1年くらい悩んだ結果、歌手に戻ろうと」

3人の息子たちからの、もう一度歌ってみれば?という言葉に背中を押されたという。

「ところが、いざ歌ってみたら全然声が出ないんです。考えてみれば20年間鼻歌ひとつ歌ったことがないので、それも当然。この音を出したいのに、喉が言うことを聞かない。どうしてもブレて音程が下がってしまう。10代20代の音域を100点とすると、30点くらいです。テレビ局に行くと、〝昔の森昌子じゃないよね〟という声が常に聞こえるような気がしていました」

焦りを覚え、ボイストレーニングに取り組んだ。先生について歌のレッスンをするのは、これが人生で初めて。声帯の筋肉を柔らかくするために、ひたすら発声練習を繰り返す日々。自分の歌に納得がいかなくても、コンサートやリサイタル、ドラマにバラエティと仕事はどんどんやってくる。そんな状態が続き、やがて更年期に突入、うつ状態に陥ってしまう。

「人に会うのが嫌、母や息子たちと話すのも嫌、家から一歩も出たくない。すべて投げ出したい気持ちでした。顔に湿疹もできました。それでも仕事は休めない。湿疹だらけの顔を見られたくなくて、テレビに出ても俯きがち。心も内向きになっていきました」

さらに、これでもかと悪いことは続く。2008年、子宮から大出血し筋腫が見つかる。レーザー手術で処置した後の検査で、今度は子宮頸がんが発見された。

「もう私、死ぬんだな、と思いました。でも、子宮を摘出すれば命は助かるとのこと。自分が女性じゃなくなるように思えていろいろ悩みましたが、お医者さまの言葉を信じて、元気になるならと手術を決心したんです」

手術は無事に成功。これ以降、気持ちが吹っ切れ、心身ともに徐々に快方へと向かっていく。

仕事もプライベートも大充実、キーワードは「輝く59歳」

「ファンの方や周りのスタッフに支えられて、自分はひとりじゃない、助けてくれる人がたくさんいるんだと実感するようになりました。息子たちが手を離れて自分の時間ができたことも大きいですね。これからは自分の好きなように生きていいんだと思えたんです。10代20代の声に戻れたらいいなとは思いますけど、それは無理。昔に戻る必要はなく、今のこの年齢の歌い方があるということに気づきました。それで、精神的にすごく楽になったんです」

ここ数年はユニークなコメントが注目され、バラエティでも引っ張りだこ。多くの視聴者はこう思ったはずだ。えっ、森昌子ってこんなに面白い人だったっけ?

「今でも驚かれています。昨日もラジオで、〝最近、森さんはコメディエンヌとして活躍されてますけど〟と言われてしまいました。〝いえ違います、私歌手です!〟と反論しましたけど(笑)」

2〜3年前からは、コンサートの構成や演出に自ら積極的に関わるようになった。受け身でプロデュースされるのではなく、スタッフと一緒に森昌子のコンサートを一から作り上げていくのが、この上なく楽しいという。

1972年、デビュー曲「せんせい」を歌う森昌子さん。

「歌はもちろん、どうやったらみなさんに楽しんでいただけるかを考えています。もっとみなさんの笑顔が見たい。そのために歌謡コントを入れたり……。今ではコンサートの半分はコントをやってます。アドリブを入れて、それがお客さまにウケるとものすごい快感。これ、まずいですよね、本当に歌手じゃなくてコメディエンヌみたい(笑)」

6月末からは音楽喜劇『のど自慢』に挑戦する。年間100本近くのコンサートの合間を縫っての、和製ミュージカル初挑戦だ。

「デビューしてから45年の間で音楽喜劇というのはやっていない分野。体力的にはキツいと思うんですけど、待てよ、まだこのジャンルはやってないぞ!という気持ちがあるんです」

仕事だけではない。プライベートでも食わず嫌いでこれまで避けてきたお寿司や焼き肉が少しずつ食べられるようになった。これも新たな挑戦。今日は何を食べようと悩むことが楽しい。

今年の10月で59歳を迎える。掲げるキーワードは「輝く59歳」。

「人生、花の咲く季節ばかりじゃなく雪の降る寒い時季もあります。でも長いトンネルの先には出口があって温かい春が待っている。心のどこかでそう思っていたような気がします。神様に試されて、これを乗り越えたらごほうびをもらえるかもしれない。それを期待して苦しいことを乗り越えられたのかな、と。今はそのごほうびを享受して、ファンの皆さまに恩返しです」

『クロワッサン』948号より

●森昌子さん 歌手/2006年の再デビュー後は、歌手だけでなくバラエティやナレーションなど活動は多岐にわたる。現在、育児経験を綴った著書『母親力』が発売中。6月29日から音楽喜劇『のど自慢』に出演予定。

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※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

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