[にこみ 鈴や]煮込みをアテに町家で昼飲みという贅沢。
明るくて昼酒にもちょうどいい午後4時からの開店で、カウンターの内側にはもつ煮込みとおでんの大鍋が湯気をあげる。そっけない品書きに書かれているのはポテトサラダやぬか漬けといった酒場の定番だけと思いきや、近海ものを扱う鮮魚商から直接買い付ける天然物の造りから、黒毛和牛の炭焼きなどまで幅広い。そのギャップに興味を掻き立てられ、食べれば値打ちぶりに納得する人が続出でいつも賑わう居酒屋がこちら。Tシャツ姿で店を切り盛りする店長の上門邦彦さんが和食の修業経験もあると聞けば、料理の洗練ぶりにも納得だ。おでんのたまごや焼たまねぎ、まかないカレーなど必食メニューも多い。築年数不詳という町家の空間とあわせて雰囲気を醸し出しているのが骨董を中心とした器づかい。正統派から用途不明の古道具まで、幅広い品揃えで人気の骨董店『アンティークベル』の店主・前田隆汎さんが営むだけに、目利きぶりはいうまでもなく。肩肘張らない骨董づかいの手本にもしたくなる。銅のおでん鍋が『有次』製というのも、京都で飲むという気分を盛り上げてくれるようだ。