[実伶]若い店主が作る端正な料理と空間と。
近ごろ上質な店が増え、街が広がりつつある御所南の西あたり。『実伶』も2016年5月に暖簾を掲げた一軒だ。炭の香りに鼻をくすぐられつつ席に着けば期待はいやがおうにも高まるというもの。店主・中尾雄三さんは『炭屋旅館』や『祇園おかだ』で活躍してきた。「焼き物が好きなので炭火焼を主役に。単品で気兼ねなく地元の人にも来てもらえ、遅い時間でも大丈夫。自分が行きたい店を作りました」と話す。中尾さんの出身地の長崎・五島列島から直送される甘鯛やのどぐろから、旬野菜、丹波牛などを焼き上げる炭火焼。前菜から椀物、揚げ物、締めの釜飯などまで70種ほど揃う料理から迷いながら選ぶのも楽しいひととき。振り塩には藻塩、揚げ物には椿を海水で煮出した椿塩など5種類の塩を使い分ける細やかな気配りも、味を際立たせている。信楽焼の古谷道生さん、美濃焼の棚橋淳さんなど作家ものと骨董を織り交ぜた器づかいもまた上質だ。