店のすぐ脇の路地は、抜けていくと辰巳神社の目の前に出る、お茶屋の〝お母さん〟も行きかうという生活道路。祗園らしい風情ある新門前通は、古美術商が並び、芸事をする人の住まいの多い地区だ。そんな土地にある出格子の古い京町家が、廣東料理の店だというのがまた興をそそられる。
「もともと廣東料理は、日本料理と近いと思うんです。西洋料理はどちらかというと味を足し合わせて作りますし、中国料理でも、四川や北京は味が濃い。廣東料理は、素材の持ち味をどう生かすかというのが真髄。チャーハンなど、日本人の口に合うから、日本に同化するように根付いているんですが、それをもう一度、本場に戻してみたい。和食店並みの最上の旬の食材を使って、本格的な廣東料理の技術で作ってみようという試みです」
そう言う廣澤将也さんは、東京・銀座の『赤坂離宮』での腕を見込まれ、2014年7月、ここ『蓮香』の料理長に。その後、あらためて海鮮料理が得意な香港の『陶源酒家』で半年間、研鑽を積み、2015年12月に再スタートを切った。目新しい食材や調理法を積極的に取り入れて、月替わりのコースを初日に欠かさず食べにくる常連もいるほど評判を呼んでいる。