【京都の名店案内】京町屋の空間で楽しむ、香港廣東料理の店「蓮香」 | レシピとグルメ | クロワッサン オンライン
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【京都の名店案内】京町屋の空間で楽しむ、香港廣東料理の店「蓮香」

京都で訪れたい名店を紹介するシリーズ。今回は、新鮮食材で作る本格廣東料理の店「蓮香」へ。
  • 撮影・岩本慶三

店のすぐ脇の路地は、抜けていくと辰巳神社の目の前に出る、お茶屋の〝お母さん〟も行きかうという生活道路。祗園らしい風情ある新門前通は、古美術商が並び、芸事をする人の住まいの多い地区だ。そんな土地にある出格子の古い京町家が、廣東料理の店だというのがまた興をそそられる。

「もともと廣東料理は、日本料理と近いと思うんです。西洋料理はどちらかというと味を足し合わせて作りますし、中国料理でも、四川や北京は味が濃い。廣東料理は、素材の持ち味をどう生かすかというのが真髄。チャーハンなど、日本人の口に合うから、日本に同化するように根付いているんですが、それをもう一度、本場に戻してみたい。和食店並みの最上の旬の食材を使って、本格的な廣東料理の技術で作ってみようという試みです」

そう言う廣澤将也さんは、東京・銀座の『赤坂離宮』での腕を見込まれ、2014年7月、ここ『蓮香』の料理長に。その後、あらためて海鮮料理が得意な香港の『陶源酒家』で半年間、研鑽を積み、2015年12月に再スタートを切った。目新しい食材や調理法を積極的に取り入れて、月替わりのコースを初日に欠かさず食べにくる常連もいるほど評判を呼んでいる。

ほとんどひとりで切り盛りする、28歳と いう若さの廣澤さん。出身は愛知県。
広々した贅沢な町家。ここは入り口すぐ にある、個室に面した通路。

内のれんをくぐり靴を脱いであがった先には、広々とした畳敷きの空間が。灯籠や鞍馬石が置かれ金木犀や在来の牡丹の植わった坪庭も目を楽しませる。

廣澤さんが腕をふるうステージのようなオープンキッチンに臨む、桜の木の一枚板のカウンター席に座り、まず気になるのは、豪快に吊るされた〈窯焼きチャーシュー〉だろう。香港式の焼き豚は、まわりに水あめを塗って、肉の旨味を閉じ込め、コク出しにも。季節、昼夜にかかわらず、どのコースにも入ってくるここの名物だ。

〈ソラマメとタイラガイの炒め物〉は、おおぶりの三重県産のタイラガイをスライスしてソラマメと一緒に鍋をふると、ジャッジャッと油がはねるいい音がして、耳からも期待感が高まる。

名物の蜜叉焼肉(窯焼きチャーシュー)。これのみ昼のコースにも登場。あとの料理は夜のコースから。
紫菜机蚕豆平貝(ソラマメとタイラガイの炒め物)。 青のりのソースで。古伊万里の皿に映える。

「中国料理では炒め物がもっとも繊細でむずかしい。鍋のひとふりの違いで味がガラッと変わってしまうのです。そんな炒め物も、盛り付けてサーブするまで、ここなら正味30秒もかからない。おいしいベストの瞬間で提供するには、このオープンキッチンは理にかなっているんです」

緑と黄色のコントラストが鮮やかな、〈アスパラのアヒルの塩漬け卵ソース〉は食感が絶妙。アスパラは炒めているのに生のようなシャキッとしたみずみずしさ。ソースがまた別格。アヒルの卵の黄身だけを塩漬けにしたものをすり潰してソースにしたもので、ただのクリームソースにならないよう、あえて粉っぽさを残してある。あとを引く旨さだ。

「廣東料理では伝統的なソースです。鶏卵と比べると、アヒルの卵はコクも香りも旨味も強い。ましてや黄身を塩漬けにして旨味を凝縮させたものをソースにしているのでとても濃厚。香港ではホタテやエビなどの海鮮の揚げ物にかけるのですが、春が旬のアスパラに添えてみました」

もうひとつの名物は、季節の素材の土鍋料理。

「4月は京都のタケノコが旬なので、毎日朝掘りを仕入れます。それを皮付きのままオーブンで1時間ほど焼くと、あくぬきしなくても食べられるんですよ。焼きあがると、部屋中がタケノコのいい香りになります。せっかくなのでお客さまの前で皮をむいて香りを楽しんでもらって。イタリア料理なら、この段階でオリーブオイルをかけて塩をふって、それだけでもうごちそうです。それを土鍋に使う。ピリ辛のサテーソースで、1万円のコースはホタルイカと、1万5000円ならナマコの乾物と、2万円なら干しアワビと煮ていきます」

ぐつぐつ泡を立てながら運ばれてくる熱々をいただく。土鍋自体がかなり高温になっている中で軽く揚げ焼きのようになったタケノコは、濃厚なソースに負けない香ばしさが。

金沙露筍(アスパラのアヒルの塩漬け卵ソース)。 廣東料理の伝統的なソース。常滑焼の皿に盛って。
蛍尤魚焼筍保(焼きタケノコの土鍋煮込み)。皮ご とじっくり焼く朝採りタケノコとホタルイカ。

コースは、デザートを入れてだいたい8〜9品。ほかには、8時間ほどいろいろな食材を煮込んだスープや、野菜の炒め物などが加わる。

器も、家屋と同じくらい年月のたっている江戸時代の古伊万里、自然釉がかかった常滑焼、チャーシューによく合う伊賀の作家に作ってもらった織部などとひとつひとつにこだわりが。お酒を飲むならぜひ、オリジナルブレンドの紹興酒を。甕に入った紹興酒をひしゃくで急須に汲んで、かわいらしい絵柄の江戸時代の九谷焼の煎茶器に注いでくれる。

ほとんどひとりで仕込みからサービスまでをこなしている廣澤さん。それでも、昼の点心も作り置きせず、その場その場で丁寧に手をかけていく。その確かな技術と真摯な姿勢に誰もが応援したくなる。

れんげ●京都市東山区新門前通大和大路東入る西之町232 ☎075・204・5340 12時~13時LO、18時~20時30分LO 不定休 昼は点心の入ったコース5,000円、7,000円、1万円。夜のコース1万円、1万5000円、2万円(サービス料込)。要予約 http://gion-renge.jp/

『クロワッサン』947号より

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