スペイン料理というと小皿のタパスが並ぶ居酒屋のようなバルを思い浮かべるかもしれない。烏丸御池に近い三条通沿い、狭い外階段を上った2階にある小さな店『アカ』も、内装はいたってカジュアル。しかし、侮ってはいけない。シェフの東(あずま)鉄雄さんが作りあげるのは、口にしたとたんに旨味が押し寄せる、目にも麗しい料理だ。
「よくモダンスパニッシュと言われるのですが、それって煙や泡や液体窒素など、皿の上のプレゼンテーションが重要視される奇抜な感じ。僕ももともとそういうのに憧れてスペインで修を始めましたが、やはり違うなと思い至りました。日本で喜んでもらえるスペイン料理ってなんやろうと思ったときに、重きをおくべきなのは食材で、スペイン料理らしい古典的でシンプルな調理法をしていけばいいのやと」