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戸建てに安心して暮らすための3つのチェックポイント。

住み慣れた一戸建てに長く暮らし続けるポイントは、見えない部分の耐震性を高めるメンテナンスにあり!
  • 撮影・森山祐子 文・寺田和代 イラストレーション・中川原 透

後半人生を楽しく安全に、自分らしく過ごすための手だての一つは「住まいのメンテナンス」と提案するのは建築家の天野彰さんだ。

「人生の持ち時間をアナログ時計にたとえると、てっぺんの12時のところは80歳。真下の6時は40歳。つまり人生の折り返しを過ぎたら自身の住まいもメンテナンスの時期だと考えてください。メンテナンスは〝手遅れ〟や〝後悔〟避けるための手だてですから、気力、体力、経済的にも余裕のある今からメンテナンスフリーの家づくりに取り組むことが大切です」

メンテナンスフリーとは修理や手入れが楽で、地震や台風に強く、そうすることで暮らしそのものが楽しくなるような住まいをつくるという意味。

「たとえば時間が経っても腐らない柱と梁、割れやよじれのない基礎、丈夫で長持ちする屋根、地震や台風に耐える家、倒れない家具など。基本部分を強く安全にすることで、将来、要介護になっても暮らしを支えてくれます」

具体的なポイントは3つある。

「インテリアや見た目の前に、建物の構造を見直すこと。構造とは見えない部分にあるもの、つまり基礎(住宅が地面と接するコンクリート部分)や柱や梁、地盤の強度など。基礎は頑丈で、柱や梁は太く、数が多いほうが安全です」

とりわけ基礎はメンテナンスの文字どおり〝土台〟でもある。

「基礎さえ補強しておけば、地盤が多少悪かったとしてもカバーできる部分が大きい。何となくカビ臭い、じめじめするなどの兆候を感じたら床を点検し、必要な補強を加えることで結局は長く暮らし続けられます」

風通しがよく断熱性の高い家にすることは心身の健康によいだけでなく、家の耐久性にとっても欠かせない。具体的な作業の前に、雨が降ったあとに外からわが家を眺めてみることを勧めている(下図参照)。

「乾きにくい壁のしみ、黒ずみ、汚れ垂れ、さびなどはメンテナンスが必要なサイン。メンテナンスのメは自分の目。まず自分の目で確かめ、できれば写真に撮っておきましょう」

雨のあとは家の危険サインを見つけやすい。手が届く場所 はチョークで印をつけたりデジカメで撮影して記録に残す。

[間取り]壁の部分を確認して部屋が四方でバランスよく囲まれているかチェック。

具体的に見ていこう。住まいの構造がどうなっているか、その強度や耐震性はどうか、実際に調べるための第一歩は、施工時の建築確認申請書や間取り図をコピーし、窓やドアがあるところ以外の壁の部分を太いマジックで塗りつぶしてみることだ。

「その間取り図をできるだけ腕を伸ばした位置から遠目で見てください。黒くはっきりした壁に四方をバランスよく囲まれている家は耐久性が高く、地震に強い。逆にどこかの角だけが白っぽい空間や、駐車場などがあって壁面数や柱の数が少なくなっている場合は危ない。家の強度は、筋すじか交い(柱と柱の間に斜めに入れて建物の構造を補強する部材)の有無ばかりが重要視さてきましたが、阪神・淡路大震災後の調査などによって、壁の配置バランスが大きく関係していることがわかっています。

1階をカーポート(空間)にした住宅。 2階部分を支える柱が脆弱だったた め地震で崩壊(阪神・淡路大震災)。 写真提供:天野さん

震災後に倒壊する割合の高さから、木造住宅の脆弱さなどが指摘されがちだが、適切な場所に適切な強度の柱や壁のある木造住宅は本来、地震に強い。

「日本の伝統的な木造建築は今でも通用する知恵が随所に施されています。木造軸組の構造は柱と梁に支えられ、木と木を〝ほぞ〟と〝ほぞ穴〟で接合し、きしみの柔軟性を活かしているため大きな揺れに対してエネルギーを減衰してくれるわけです」

耐震性のアップには、筋交いの有無とともに柱や壁などの構造部分と屋根の耐震性を見直すことが欠かせない。

屋根をチェックするには、どこか高い場所から自分の家の屋根や壁を双眼鏡などでのぞいてみる。

「少し離れた場所から見ることで、屋根や壁のヒビ割れにも気づける。テレビのアンテナをつけたり、ソーラーパネル、温水器などを設置するための工事で屋根に上がった時、瓦が割れたりずれてしまうことも多いものです」

スレート系(セメント系)の屋根は自然にひび割れが起きることも多いため、必ずチェックし、リフォームの際に葺き替える必要がある。

[基礎]家の骨格にあたる基礎、柱、壁を補強し耐久性と耐震性を高める。

地盤が悪い場所に立つ家は、基礎部分が経年変化を受けやすい。まずは自分の目で基礎部分にヒビ割れなどがないか確認してみよう。

「1階キッチンの床下収納庫があれば、収納箱は簡単に外せるので、素人でもそこから基礎の状態を確認できます」

基礎には①コンクリートそのまま、②コンクリートに吹き付け塗装、③モルタルが塗られているものなどさまざまな仕上げがあって一見分かりにくいため、まず床下からヒビがどの程度の深さに達しているかを判断する。

「外部から分かるヒビを見つけたら、そこに針金などを入れ、10〜15ミリ以上入るようなら表面だけでなく基礎部分が割れていると判断できます。その場合は、壊してやり直すか、表面を削り取って新たな基礎を添えるなどの補強が必要です。基礎のヒビを放置すると、やがて室内のドアや建具などにゆがみを生み、地震の際に倒壊する原因になります」

コンクリートのみで鉄筋の入っていないこともある布基礎とよばれる建物では、コンクリートの風化にともなって強度も落ちているケースが多い。リフォームで補強するには、イラストのように現在の基礎の周りに改めて新しい基礎をつくる必要がある。「ホールインアンカーとよばれる強いボルトを打って鉄筋をからめ、地盤となるグリ石を敷いて圧力(重量)を分散し、新しいコンクリートの基礎をつくります。弱い基礎の周りをコンクリートでタガをはめるようにして固めます。

元工事が不充分だったり、地盤の悪い場所は基礎がダメージを受けやすい。添え木をし、ボルトを打ち込み、鉄筋をからめ、軒下はコンクリートなどで固め(犬走り)、モルタルとのなじみをよくするためにコンクリート表面をざらざらに(目荒らし)する。

『クロワッサン』937号より

●天野彰さん 建築家/一級建築士事務所アトリエ4A代表。主著に『転ばぬ先の家づくり』『六十歳から家を建てる』ほか多数。http://www.amanoakira.com

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