後半人生を楽しく安全に、自分らしく過ごすための手だての一つは「住まいのメンテナンス」と提案するのは建築家の天野彰さんだ。
「人生の持ち時間をアナログ時計にたとえると、てっぺんの12時のところは80歳。真下の6時は40歳。つまり人生の折り返しを過ぎたら自身の住まいもメンテナンスの時期だと考えてください。メンテナンスは〝手遅れ〟や〝後悔〟避けるための手だてですから、気力、体力、経済的にも余裕のある今からメンテナンスフリーの家づくりに取り組むことが大切です」
メンテナンスフリーとは修理や手入れが楽で、地震や台風に強く、そうすることで暮らしそのものが楽しくなるような住まいをつくるという意味。
「たとえば時間が経っても腐らない柱と梁、割れやよじれのない基礎、丈夫で長持ちする屋根、地震や台風に耐える家、倒れない家具など。基本部分を強く安全にすることで、将来、要介護になっても暮らしを支えてくれます」
具体的なポイントは3つある。
「インテリアや見た目の前に、建物の構造を見直すこと。構造とは見えない部分にあるもの、つまり基礎(住宅が地面と接するコンクリート部分)や柱や梁、地盤の強度など。基礎は頑丈で、柱や梁は太く、数が多いほうが安全です」
とりわけ基礎はメンテナンスの文字どおり〝土台〟でもある。
「基礎さえ補強しておけば、地盤が多少悪かったとしてもカバーできる部分が大きい。何となくカビ臭い、じめじめするなどの兆候を感じたら床を点検し、必要な補強を加えることで結局は長く暮らし続けられます」
風通しがよく断熱性の高い家にすることは心身の健康によいだけでなく、家の耐久性にとっても欠かせない。具体的な作業の前に、雨が降ったあとに外からわが家を眺めてみることを勧めている(下図参照)。
「乾きにくい壁のしみ、黒ずみ、汚れ垂れ、さびなどはメンテナンスが必要なサイン。メンテナンスのメは自分の目。まず自分の目で確かめ、できれば写真に撮っておきましょう」