建築家と一緒に考える50代からの住まい塾。【前編】 | インテリア | クロワッサン オンライン
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建築家と一緒に考える50代からの住まい塾。【前編】

さまざまなファミリーイベントを経てきた50代、振り返れば自身の暮らし方も大きく変化してきたはず。だからこそここで一度、住まいを仕切り直してみたい。今改めて考えたいポイントを、建築家の青木律典さんと、ライフスタイルに関する記事を多数執筆する文筆家の大平一枝さんが自身の体験を交えて語ります。
  • 撮影・青木和義 文・瀧井朝世
建築家・青木律典さん宅のキッチン。築35年の団地をリノベーションし、開放的な空間に。

大平一枝さん(以下、大平) 私は30代でコーポラティブハウスを建て、4人家族で暮らしてきました。今回息子が留学することになり、家族が1人少なくなると家の広さに対する感覚が変わりました。下の子もそのうち独立しますし、家について考え直そうと思っているところです。

青木律典さん(以下、青木) 年齢を重ねるごとに、家との向き合い方は変わっていくものですよね。

大平 家を見直すには40代だとまだはやい気がするし、60代だと根気よく家づくりに向き合う気力があるか分からない。50代はいいタイミングですね。

青木 そうだと思います。ところが多くの人が、家に自分を合わせようと考えてしまう。もっと自分に家を合わせることを考えてもいいのでは。僕は40代ですが、自分でリノベーションした家に住んでからはストレスゼロです。

大平 今日は青木さんのお宅にお邪魔していますが、土間が広いんですね。

コンクリートとウッドの組み合わせでシャープさがありつつ温もりも感じさせる内装に。キッチンは造作。

青木 どう空間を広く見せるかと、限られたスペースでどうオンとオフを切り替えられるかを考えました。それで土間からリビングに上がるのに少し段差をつけました。そうすると体感的に別の空間に行く感覚になるんですよね。

大平 洗面所にも扉や壁がなくて、トイレの上に天板を渡して作業スペースにできるのには驚きました。

青木 狭い空間を有効に使いたくて使用しない時は別のことに活用できるようにしたんです。

大平 寝室の入り口に扉がないのも斬新ですね。

青木 扉代わりに部屋の中に布をかけて目隠しにしながら、奥行きを見せています。要はどう見立てるかなんです。日本人は見立てが得意ですから、みなさんもいろんな工夫ができるはず。

大平 やはり中古物件をリノベーションするほうが、新築を建てるより予算は安いですか?

青木 長い目で見た時にどちらがいいかは人それぞれです。中古物件を一緒に探しているうちに、この方はリノベーションより新築がいいと思って、僕から提案する場合もありますよ。

大平 え、青木さんは中古の物件探しから一緒にしてくださるんですか。

青木 ええ、やりますよ。

大平 別料金で?

青木 いえいえ、別料金はかかりません。その方にとっては一生に1回かもしれませんから、できる限りのことはしたいと思っています。それに、一緒に物件を探したほうが、建物の構造について把握できたり、クライアントの好みもより深く分かって信頼関係も深まりますし。こちらもメリットが多いんですよ。

大平 中古物件を選ぶ時、プロが見てくれると安心ですよね。配管のこととか分からないですから。

青木 それと、みなさん見落としがちなのは修繕費です。戸数が少ないと積み立てる修繕費もなかなか貯まらない場合もありますし。

青木さんデザインの桟が2本だけの障子は洋室にもな じむ。これでも和紙がたわむことはないのだそう。

家の中での2人の距離感は 夫婦によってまったく違う。

大平 内装に関しては、50代のご夫婦からどういう依頼がありますか。

青木 お子さん3人と53平米の家に住むご夫婦から、子どもが独立した後を考えてリノベーションしたいと依頼されたことがあります。その時は、個室のない家を提案して採用されました。

大平 2人で住むなら個室は要らない、ということですね。

青木 その一方で、夫婦の寝室を別々にしたいという方もいます。夫婦だから寝室は一緒、という考えが正解というわけではないんですよね。「こういうものだ」という思い込みを取り払って、自分たちがいいと思う形を探していくのが一番です。

大平 子どもが巣立って夫が定年を迎えて夫婦2人になった時、自分はどうしたいのか。一人でゆっくり本を読むスペースはほしいし……。

青木 それも難しく考えることはないんですよね。先ほどの見立ての話になりますが、布1枚を上から吊るすだけで空間は区切られますから

大平 私、今住んでいる家を建てた時、キッチンの吊戸棚をお洒落だと思ってオープンラックにしたんです。でも、使ってみたら、もう油まみれになるんですよ。それでリフォームした時にその棚に扉をつけました。汚いのが嫌だったというよりも、その棚を見るたびにちゃんと掃除ができない自分を責められているようで嫌だったんです。扉ひとつで気持ちが楽になりました。

玄関の横にある4.5畳の部屋。 左側には収納があり、プリンタ ーなどが収められている。
壁に見えるけれども実は可動式。個室の戸とダイニングの間仕切りを兼ねる。

>> 【後編】はこちら

『クロワッサン』937号より

●青木律典さん 建築家/デザインライフ設計室代表取締役。掲載誌に『スタイルのある暮らしと家』など。事務所所在地は東京・町田。

●大平一枝さん 文筆家/朝日新聞デジタルに「東京の台所」(文・写真)連載中。著作に『紙さまの話』『信州おばあちゃんのおいしいお茶うけ』など。

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