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帰省シーズンだから考えたい1
いまから始める相続対策。〜財産計算編〜

「相続」は相続税を払う、払わないにかかわらず、誰もが避けて通れない問題です。スムーズな相続の秘訣を紹介します!

「相続とは、亡くなった人の財産や債務を受け継ぐことで、人が亡くなった瞬間から始まります。『財産がなければ関係ない』と思っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。家族が亡くなるということは必ずいつかは経験すること。財産の多少に関係なく、相続はすべての人に関わってくることです。できれば親も自分も元気なうちに、誰が何を受け継ぐのか話し合いを始めたほうがいいですね」と、中島典子さん。では、具体的には今からどんなことに着手しておけばいいのだろうか。

中島典子さん●税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP)

「最初にやっておきたいのは『財産の棚卸し』です。不動産や現金、預貯金、有価証券等の金融資産といった〝プラスの財産〟はどのくらいあるのか。そして逆に銀行ローンや車のローンといった〝マイナスの財産〟はどのくらいあるのかを書き出し、正味財産を把握するのです。そして、通常その金額が基礎控除額以下ならば、相続税の心配はいりません。相続税の申告も不要です」

基礎控除額は相続税法の改正により、2014年末までは「5000万+1000万×法定相続人数」だったのが2015年1月1日開始の相続から「3000万+600万×法定相続人数」となっている。たとえば妻と子ども2人の場合、4800万円だ。

「もし基礎控除額を超えるのであれば、何もしないのは危険だと思います。相続税を納税する資金を確保するための『納税資金対策』、できるだけ争いなく円満に遺産分割するための『分割対策』、無駄な税金を抑えるための『節税対策』という3つの対策が必要になってきます。都心に戸建てがある家庭は、相続財産がたとえそれだけであっても課税評価額が高いので、要注意ですね」

「相続のもめごとは3Kから起きる」と、中島さんは言う。

「今まで受けてきた相談から私が作った造語なのですが、『感情』『勘定』『環境』の3つのKが原因で、相続が『争続』なってしまうことが多いのです。兄弟間などで長年、鬱積していた感情、相続する財産の勘定 、今自分が置かれている経済環境 。そういったものすべてがいざ相続、という場で一挙に混ざりあって爆発しないよう、親の相続自分の相続の備えをしていきましょう。親の老後、介護ときちんと向き合いながら、相続も円満に。一番必要なのは、親との信頼関係を保ちながら対話を進めていくこと、親がどうしたいのかという想いをきちんと聞き出して、確認していくことです。その第一歩としてもぜひ、下の『財産の棚卸しシート』を作成してみてくださいね」

まず、不動産をはじめとする、プラスの財産を計算しよう。

では、おおまかなプラスの財産の計算を始めよう。

「最初に不動産の計算をします。まず自宅は土地と建物と分けて、土地は市街化地域として、1㎡あたりの路線価×敷地面積(㎡)で計算します。路線価は国税庁のHPで確認してください。建物に関しては納税通知書に明記してある、固定資産税評価額×倍率(1・0)で計算します。

そして現金、預貯金を確認。有価証券に関しては、

「上場株式は証券会社等からきている直近の資料で銘柄と評価額を確認しましょう。国債、社債、投資信託等も金融機関等の報告書をチェックして金額を確認してください」

生命保険は保険会社からの契約のお知らせを確認し、相続人が受け取る保険金(普通死亡の場合)をすべて書き出す。ただし「500万×法定相続人数」は非課税となるので、その分を差し引いた額を算出する。

「生命保険は契約者、被保険者、受取人は誰になっているか、きちんと見ておきましょう。親がとても若い頃、結婚前に入った保険なので受取人は親の兄弟にしてある、あるいは再婚して新しい家庭を築いたにもかかわらず、保険金の受取人は前妻のままになっていて、結局、家族が保険金を1円も受け取れなかったなどというケースも多々あります」。

次にマイナスの財産を計算しよう。

ゴルフの会員権等、その他の財産を書き入れたら、今度は各種ローン等、マイナスの財産を書き出してみる。

「住宅ローンは、ほとんどの方が団体信用生命保険の被保険者になっていますので、亡くなった時に残債が保険金で相殺されれば、マイナスの財産として計上する必要はありません。でも事業をされている方や、不動産をたくさん所有されている方の銀行ローンは見逃さないで。投資用のマンションをフルローンで買っている方、空いている土地を担保にして銀行からお金を借り、アパートを建てているような場合は要注意です。フタを開けてみれば、空室続きで家賃が入らず、財産は目減りする一方。結局、財産はけっこうあったけれど、銀行ローンのほうがもっと多かったという状況になっている方もいますので、負債はきちんと把握しておきましょう」

また、念のため確認しておきたいのは、親が誰かの保証人や連帯保証人になっていないかということ。

「親が亡くなった場合、その地位も相続しなければなりません。負債額に合算しないまでも、事実の確認を」

そしてプラスの財産の合計Ⓐからマイナスの財産の合計Ⓑを引く。

「これが、現在の正味財産となります」

『クロワッサン』928号(2016年7月10日号)より

●中島典子さん・税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP®)広尾麻布相続センター代表。社会保険労務士でもある。共著本に『いまからはじめる相続対策』。

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