煮魚、きんぴら、お漬物。和のおかずと
パンを美味しく合わせる方法。
パン業界の人にはその名を知られた愛パン家の渡邉政子さん。和のおかずとパンを美味しく合わせる方法を教えていただきました。
このタイトルについて、本人はこう語っている。
「多くの人が、毎日ごはんを食べていますよね。日本人にとっての主食はやはりごはんですから。でも、その毎日の主食が私の場合、パンなんです。パンを食べるからジャムを塗って、とかチーズをのせて、ハムをのせて、という考えが私にはまったくありません。大好きなパンを、大好きないつものおかずと一緒に食べる。つまり、多くの人はパンにジャムをつけて食べるけれど、まさこはこんなものと一緒にパンを食べてます、ということです」
まさこさんは一日一回しか食事をしない。一日一回の食事に必ずパンを食べる、となれば、『まさこジャム』の、パンチの効いた副題にある文言、「365日パンのみを食べて生きる」は、あながち間違ってはいないことになる。というわけで、まさこさんのことが気になってしかたなくなり、彼女の食卓を実際に見せてもらいに、冬の間まさこさんが両親とともに暮らす長野県茅野市の実家まで訪ねていくことになった。
茅野駅のすぐ近くにあるお宅に迎えてくれたまさこさん、日当たりのいダイニングキッチンに案内してくれた。
この日、スタッフが東京から持参した、まさこさんお気に入りのパン屋さん、桜新町の『ベッカライ・ブロートハイム』のバゲットを手渡すと、満面の笑みに。まさこさんが世界で一番好きなバゲットである。どんなところが魅力なのか聞いてみると、
「他にも美味しいバゲットはあるけれど、毎日食べても飽きない、毎日食べたいと思わせるのはこのバゲットです。私にとって、パンは白いごはんと同じですから、どんなおかずとも合う、飽きのこないパンがいちばんです。存在感が大きすぎる、美味しすぎるバゲットはそれ自体がごちそうなのでおかずを食べる気がしなくなる。だから私には向きません。もちろん、そういうパンを食べたくなる時もありますが」
このように、パンに関しての価値観がはっきりしていて、迷いがないのさすが「愛パン家」の貫禄。そして早速、食事するまさこさんを取材することに。
「じゃ、おかずを出しますね。きょうのメインは煮魚です」。ガスコンロの上に煮魚の鍋、煮豆も鍋の中。冷蔵庫を開けると、たくさんの密閉容器に綺麗に詰めた惣菜の数々が。それらを一品ずつ器に盛りつけるまさこさん。並んだおかずは、切り昆布煮、きんぴら、洋風切り干し大根、セロリじゃこ、豆の煮物、ゴーヤの佃煮など。自家製の赤大根漬けと千枚漬けもある。
「野菜が好きなので多めです。それから、パンに塩気があるのでおかずは薄味を心がけています」
食卓の準備が整ったので、「いただきま〜す」と、まさこさん。おかずを食べ、パンを食べる。いたって普通である。
「そうでしょう? おかずを食べて、ごはんを食べる。みんなそうやって食事しますよね? 私の場合は、それがパンに変わっただけですよ(笑)」。
時々、パンになにかをのせたり、煮魚の汁にパンを浸したりしながら、食事を楽しむ。なにより、食事中のまさこさんは、楽しそうで幸せそうだ。
◎渡邉政子さん 愛パン家/肩書の「愛パン家」は、「パンの会」を立ち上げた’92年から名乗っている。著書に『まさこジャム』(ガイドワークス)。
『クロワッサン』919号2016年2月25日売号より
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