ロシャン・シルバさんに聞く、
豊かな食の空間。
美しくて古いものに囲まれ、目にもおいしい食の空間。決して広くない一般的な間取りのキッチンはどこも絵になる美しさにあふれています。厳選されたアンティークを使いこなして暮らす、ロシャン・シルバさんのご自宅を訪ねました。
毎日使ってこそ分かる、アンティークの美しさ。
日差しがたっぷり差し込むキッチンから、ハーブやスパイスのいい香りが漂ってきました。手際よく料理を進めているのは、3つの人気カフェのオーナーであり、服のデザインや店舗の設計なども手がけるロシャン・シルバさんと、妻の裕子さんです。
「生まれ育ったミラノの家は、18世紀の建物。家の中には、アンティークの家具や食器がたくさんありました。また、大学生の時に、イタリアの田舎にある知人の家で、数カ月暮らしたこともあります。その家の家具もアンティークでした。重厚な雰囲気だった実家の家具に比べると、もう少し素朴な味わいのものです。その家では、トマトやイチジクを収穫して、一年分の保存食を作ったり、リンゴを一年じゅう倉庫に保管して、いろいろな料理に使ったりしていました。ものをほとんど捨てない暮らしが印象的でしたね」
その後も、ヨーロッパ各地を訪れ、フランスで暮らした経験も持つシルバさん。さまざまなものに触れながら、独自の世界観と美意識を作り上げていった。現在使っている器は、多くが19世紀以前のアンティーク。年に4〜5回は訪れるという、フランスやベルギーで手に入れたものです。白やクリーム色の、シンプルで、ぽってりとした質感のものが多い。
「古い器の持つストーリーや味わいが、料理をよりいっそうおいしく見せてくれる気がします」
食器に、調理道具に。ひとつの器を何通りにも。
「たとえば、カフェオレボウルひとつとっても、お茶を入れるほかに、スープを入れたり、食材を混ぜるボウル代わりにしたり。ひとつの使い方に限定しないので、道具も器もたくさんは必要ないんです」
この家の器や道具が、どれも生き生きして見えるのは、シルバさんの型にはまらない発想によって、毎日、あらゆる場面で活躍しているからかもしれません。
「我が家の食器や鍋は、10年以上使っているものばかりです」
本当に好きなものを厳選し、それをとことん使い抜く。シルバさんのキッチンを美しく見せている、もうひとつの秘密は、ここにありました。
◎ロシャン・シルバさんは、イタリア出身。中目黒、鎌倉、自由が丘にあるカフェを経営。独特のセンスが人気を呼び、服のデザイン、店舗設計、ウェディングの演出など、活躍は多岐に。著書に『ラヴィアラカンパーニュ ロシャン・シルバの静かな生活』(1月と7月)。妻の裕子さんはニットデザイナー。
『クロワッサン』915号(2015年12月25日号)より
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