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ペルー料理店主に聞く、
スーパーフード「キヌア」の魅力。

ここ数年、日本でもスーパーフードとして耳にする機会の増えたキヌア。2013年、「キヌアが食糧危機の重要な解決手段になり得る」として、国連がこの年を「国際キヌア年」と定め、さらにNASAはキヌアを「21世紀の主要食」と評価し、宇宙食としての研究を進めています。こうした国際的な機関の動きをきっかけに、欧米ではダイエット食として有名人の間で火が付き、いまや世界中で注目の雑穀に。そもそもキヌアとはどんな食物なのでしょう。

手前から、えびのスープ〈チュペ〉、真鯛のマリネ〈ティラディート〉、かぼちゃとサツマイモのデザート〈ピカロネス〉。すべてキヌア 入り。『荒井商店』のディナーメニューはおまかせコースが基本で、希望に応じて料理にキヌアを使うこともできる。

手前から、えびのスープ〈チュペ〉、真鯛のマリネ〈ティラディート〉、かぼちゃとサツマイモのデザート〈ピカロネス〉。すべてキヌア
入り。『荒井商店』のディナーメニューはおまかせコースが基本で、希望に応じて料理にキヌアを使うこともできる。

ここ数年、日本でもスーパーフードとして耳にする機会の増えたキヌア。

2013年、「キヌアが食糧危機の重要な解決手段になり得る」として、国連がこの年を「国際キヌア年」と定め、さらにNASAはキヌアを「21世紀の主要食」と評価し、宇宙食としての研究を進めている。こうした国際的な機関の動きをきっかけに、欧米ではダイエット食として有名人の間で火が付き、いまや世界中で注目の雑穀に。そもそもキヌアとはどんな食物なのでしょう。

「原産地は南米アンデス地方です。ペルーでは主に高地で栽培されていて、赤や紫色の穂をつけて育ち、収穫時には直径1~2ミリの種子になります」 と、ペルーでの1年間の修業を経て、10年前に東京・新橋に『荒井商店』を開いた料理人の荒井隆宏さん。

「ペルーの山岳地帯に住む人たちは、温かいスープに入れたりして、日常的にキヌアを食べていました。朝晩の冷え込みが強く、高山病の恐れもある高地での生活は過酷ですから、栄養バランスに優れたキヌアが重宝されたのも自然なことかもしれませんね」

キヌアは白米に比べ、たんぱく質は2倍、食物繊維は8倍、カルシウムは10倍と豊富に含み、ビタミンB群や鉄分など不足しがちな栄養もバランス良く摂ることができます。この栄養価の高さが国連やNASAに評価された大きな要因のひとつです。さらに、生命力が強く様々な生育環境に対応できる利点も。

「ペルーでも高地だけでなく、種類によっては低地でも育っていたようです。現地の人たちにとってもキヌアは身近な健康食品のような感じで、街中でリヤカーを引いたおじさんがキヌア入りジュースを売っていたりしましたね」

実はペルーはキヌア以外にも、様々な食物が育つ恵み豊かな土地で、近年、その食材と食文化の多様性から世界的にもペルー料理の人気が高まっています。

キヌアは、アンデス山脈の高地では数千年前から栽培され、「母なる穀物」とも言われる。ペルーやボリビアなど南米が主な生産地だが、近年、少しずつ日本でも栽培する試みが始まっている。

キヌアは、アンデス山脈の高地では数千年前から栽培され、「母なる穀物」とも言われる。ペルーやボリビアなど南米が主な生産地だが、近年、少しずつ日本でも栽培する試みが始まっている。


 
鮮やかな野菜が並ぶペルーの市場。海側の地域では、獲れたての新鮮な魚介なども売られる。

鮮やかな野菜が並ぶペルーの市場。海側の地域では、獲れたての新鮮な魚介なども売られる。

「ジャガイモや唐辛子、トウモロコシはペルーが原産で種類も豊富です。また、ペルーには山岳地帯、海岸地帯、熱帯雨林地帯と3つの気候帯があって、それぞれ育つ食物が違うのはもちろん、鮮魚のほか、アルパカやカメの肉なんかを食べる地域もあって、地元の市場は覗くたびに発見がありました。しかもヨーロッパやアフリカ、アジアからの移民によっていろんな文化が混ざり合っているから、ペルー料理は自由でおもしろい。日系人はペルーの醤油を使った炒め物が好きだったり、白人系なら煮込み料理が得意だったり。地方や家庭ごとにも違いがあります」


 

 

首都のリマを中心に各地を巡った荒井さん。知り合いのペルー人の家で家庭料理を食べたり、児童養護施設に住み込みで「給食のおじさん」として働いたりしながら現地の味を舌で覚え、その後は魚介専門店や定食屋、ホテルのレストランでも修業を積みました。日本の寿司店やフランス料理店でも学んだ経歴を持っていますが、ペルーでの経験を経てますますペルー料理の虜に。
街中ではキヌア入りジュースが売られ、人々の喉を潤す。寒い時季にはホットで飲むことも。

街中ではキヌア入りジュースが売られ、人々の喉を潤す。寒い時季にはホットで飲むことも。


 
素材の味を活かすペルー料理は日本人の口にも合うと思います」と荒井さん。

素材の味を活かすペルー料理は日本人の口にも合うと思います」と荒井さん。

「とにかく味付けも調理法もバラエティに富んでいるから、作るのも食べるのも飽きないのがいいですよね(笑)。米や生魚をよく食べたり、意外と素材の味を活かす料理が多かったり、日本食との共通点もあるので、日本人の舌にも合うと思いますよ」

『荒井商店』のディナーは、お客の好みや希望の価格を聞いて荒井さんがオリジナルで組み立てるコース仕立て。女性客の希望で、キヌア尽くしのコースを提供したこともあります。

「ペルー料理が初めての人にも、故郷の味を求めてきた在日ペルー人にも、一人ひとりに合わせた料理を心がけています。僕の作るペルー料理は本場より少しだけ油と塩を少なめにしているので、優しい味わいに驚く人も多いかもしれません。まだまだ日本では馴染みが薄いですが、一人でも多くの人においしさを知ってもらいたいです」


そんなキヌアを使って作るレシピ記事、
「キヌアを美味しく食べるペルー料理レシピ3種」はこちら。
https://croissant-online.jp/topics/38150/

◎荒井隆宏さん ペルー料理店『荒井商店』店主。『オテル・ドゥ・ミクニ』『TheRoad and The Sky』を経てペルーで修業後、2005年に開店。著書に『荒井商店 荒井隆宏のペルー料理』(柴田書店)

『クロワッサン』912号(2015年11月10日売号)より

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