くらし

最初から最後まで、油の扱い方がきめ手です――陳建民(四川飯店主人)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は日本で四川料理を広めた、あの名料理人の言葉を紐解きます。
  • 文・澁川祐子
1977年10月号「中華鍋がひとつあれば……」より

最初から最後まで、油の扱い方がきめ手です――陳建民(四川飯店主人)

四川省出身の陳建民さん(1919-1990)は、四川料理の料理人として1952(昭和27)年に来日。1958(昭和33)年、東京の田村町(現・西新橋)に開業した四川飯店で腕を振るい、1966(昭和41)年には料理学校も設立。日本における中国料理の普及に努め、「四川料理の父」と呼ばれました。

中華鍋の使い方を教える特集では、陳さんの妻で同じく料理家として活躍した洋子さんとの連名で登場。おすすめの中華鍋のサイズや手入れ方法から、調味料の種類、料理のコツまで丁寧に解説しています。

そのなかでぜひとも揃えたいものとして挙げているのが、炸鏈(ジャーレン、湯切りや油切りに使う穴の空いた大きな杓子)。中国料理の下ごしらえの調理法に、食材をさっと油に通す「油通し」があります。油に入れた具材を一気に引きあげたり、油に香りづけしたりするためには、炸鏈はなくてはならない道具であり、これがあるかないかで<味がぐうんとちがう>と語ります。

炸鏈の必要性は、とりもなおさず<中国料理では油の扱いがどんなに大切かを物語って>いると陳さん。そこで出てきたのが、中国料理の真髄を語るこの名言です。的確な言葉で中国料理のおいしさを伝えてきたからこそ、今なお麻婆豆腐を筆頭に、陳さんのレシピは広く愛されているのでしょう。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

SHARE

※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

人気記事ランキング

  • 最新
  • 週間
  • 月間