芸者といっても小えんは、舞や唄や三味線といった芸を身につけているわけではなく、酒の席で愛想をふりまくのが仕事。それどころか赤線が廃止されたご時世、小えんは置屋から斡旋があれば、あっけらかんと客と寝る女なのです。時代の流れに乗ってバーの女給に転職してみたり、お誘いがあれば二号さんとして既婚男性に囲われる。食べていくため、客である男に甲斐甲斐しく尽くす小えんは「可愛い女」です。それで万事うまくいっていたのも束の間、愛人の死であっさり後ろ盾をなくし、元の芸者稼業に戻ることに。愛人の妻になじられ、密かに好きだった男は他の女と結婚し、小えんは否応なしに、女として生きることの危うさに目覚めていくのです。
当時28歳の若尾文子のコケティッシュな色気がたっぷり詰まって、着物姿を堪能しているうちにストーリーがどんどん展開していきます。可愛い女としてゆらゆら楽しく生きる小えんを、女の自我をめぐる問題に直面させ、そこに『女は二度生まれる』という題をつけた名匠川島雄三のキレのある演出が素晴らしい。女いかに生くべきかを軽やかに描いた、女性にこそ観てもらいたい1作です!