「曲師」と呼ばれる、浪曲三味線の第一人者・沢村豊子さん。17歳の頃から、当時、ラジオで人気を博していた浪曲師・国友忠の相三味線(専属の伴奏者)を30年にわたって務めたほか、さまざまな大物歌手、浪曲師の三味線も担当。三味線の音のキレや響きを表す「音締め」の良さは、浪曲界随一と評判だ。81歳の今も、第一線で活躍している。
手みやげにしている、茨城県古河市『ぬた屋』の鮒甘露煮との出合いも、長年、相三味線を務めた国友氏がきっかけだった。昭和40年代、国友氏が茨城県の旧三和町(現在の古河市の一部)に転居し、牧場で競走馬を育てることに。その縁で沢村さんも、昭和50年に古河市に家を建てた。創業100年を超える『ぬた屋』は、その頃からの贔屓だ。
「今は仕事が忙しく、古河の家には滅多に帰れないんですが、帰るたびにこの甘露煮をまとめて買ったり、お店に電話して送ってもらったりしています。仕事仲間や、いつも贈りものをくださるファンの方々に差し上げていますね。一度、川魚は大嫌いで絶対に食べないという知人に、『いいから一度食べてみて』と言って渡したら、次に会った時に『おいしかった、また欲しい』と言われましたよ(笑)」
厳選した上質な小鮒を、醤油や砂糖、みりんなどの調味料で8時間以上じっくり煮込む。添加物をいっさい使わず仕上げた甘露煮は、しっかりと味がついていながら、シンプルな味わいで、ごはんもお酒もすすみそうだ。
「柔らかくて、骨が全く口に残らない。頭から尻尾まで、するっと食べられます。私は温かいごはんと一緒に食べるのが好き。お茶漬けにしてもおいしいですね」
焼き魚や小魚が大好きで、普段の食事も魚が多いという沢村さん。80歳を超えてもなお溌剌としている秘訣のひとつは、この甘露煮にあるのかもしれない。