血管といえば動脈や静脈が頭に浮かぶ人が多いでしょう。動脈は栄養や酸素をたっぷり含む血液を心臓から各部に送り出す血管。静脈は、各部から二酸化炭素や老廃物を回収してくる戻り道の血管(肺静脈は例外)というのが通常のイメージでしょう。
確かにその通りで、そしてこれらの血管は太く根幹となるものなので、トラブルによるダメージも大きいのが特徴です。
特に、動脈は詰まったり、破裂したりすると命に関わる血管です。胸部大動脈で直径約25~30mm、腹部大動脈で20~25mmと太く、そこを流れる血液の量も膨大だからです
その動脈が詰まったり、破裂したりして起こるのが脳卒中や心筋梗塞、大動脈瘤(りゅう)、大動脈解離などの心血管事故です。昨日まで元気だった人が倒れたり亡くなったりする例もよく聞きますが、これは血管には痛みなどの自覚症状がなく、突然に限界を超えるからなのです。健康診断で血圧や血中脂質、動脈硬化の検査などを行うのも、大きな心血管事故を防ぐために未然に異常を見つけるためです。
また静脈は老廃物を回収して肺へと戻していく血管ですが、心臓から遠く、心拍による血液を流す力が弱いため、血栓ができたり、血液の流れが悪くなりがちです。これを防ぐために、静脈には逆流防止の弁がついていますが、それでもうまく流れずに静脈瘤になったり、深部静脈血栓症などが起こりがちで、最近よく耳にするエコノミークラス症候群(肺血栓塞栓(そくせん)症)は静脈による病気です。
どちらも日頃から検診などでチェックしておき、大きな病気につながらないようにすることが大切です。