からだ

日々の暮らしに簡単に取り入れられる、新たな“腸活”習慣。

近年、美しさと健康へのアプローチに効果的と“腸活”に励む人が増加中。腸の健康状態を整えれば、便秘予防やアンチエイジング、免疫力アップなど、体全体の健康へ繋がるという報告も多数あり、未知の領域も多い腸は今後も注目の器官。謎の多い腸のひみつに迫りながら、日々の工夫でヘルシーな腸を手に入れる、おすすめの新習慣もリサーチします。
  • by ネスレ / 撮影・黒川ひろみ(人物) 文・板倉ミキコ

健やかな腸を維持するには、毎日スッキリお通じがあるのが理想!? でも、実際便通にまつわるトラブルは、多くの人が抱える普遍の悩み。気持ちよく出し切れない、排便回数が少ない、いつも便がゆるい……。人には言いにくい悩みだからこそ、腸のスペシャリストに本当のところが聞きたい! そこで、排便機能が専門の医師・神山剛一さんに、便秘でお悩みの杉山紘子さんが理想の“腸活”についてとことん質問してみました。

神山剛一(かみやま ごういち)さん / 医学博士 外科、胃腸科、肛門科。「寺田病院」勤務。排便機能が専門。便秘や便失禁の診療だけでなく、在宅医療における排便コントロールに関しても積極的に取り組む。
杉山紘子(すぎやま ひろこ)さん / クロワッサン倶楽部メンバー。子どもの頃から便秘が悩み。実母、そして娘も便秘タイプなので、もはや遺伝と諦めかけていたが、改善策があるなら何でも試したいと本企画に参加。

便ともっと仲良くなって、 自分の体と心を整えよう。

――小学生の頃から今まで、長年便秘に悩んできたという杉山さん。母親も便秘気味ということで、生まれつき腸そのものの働きが悪いのかも、と半ば“腸活”を諦めつつ40代を迎えた。

神山 便秘が悩み、という人のほとんどは、実は便秘ではないことが多いんですよ。医療の現場でも、何をもって便秘と定義するかは、いまだあやふやな部分があります。「3日以上自然な排便がないから」と言われて病院に来られ、レントゲンを撮ると腸に便が残っていないことも多いんです。便秘だと思い込んでいるけれど、実は単純に出す分の便が溜まっていない、という可能性もあります。

杉山 え、そうなんですか? 私も数日間お通じがないことが多いので、便秘なんだと思っていたんですが……。便をスッキリ出さないと大腸がんになりやすいとか、便秘は肌トラブルの原因になる、老化を促進するなどと聞くので、いろいろ不安に思う部分が多くて。

神山 “便秘は百害あって一利なし”ということばかりに囚われて、すべての不調を便秘に結びつけてしまっているのが問題ですね。多くの人は、実際の体の状態と、便が教えてくれるメッセージをしっかり理解していないんです。私たちの顔が一つとして同じでないのと同様、腸も十人十色。週1の排便で100歳まで元気な方もいらっしゃいます。みなさん、理想の排便にこだわりすぎなんです。

『うんトレー誰にも言えないうんこのトラブル「スッキリ解消! 」ブック』(方丈社)の監修もしている神山さん。
便秘についての悩みを相談する杉山さん。
『うんトレー誰にも言えないうんこのトラブル「スッキリ解消! 」ブック』(方丈社)の監修もしている神山さん。
便秘についての悩みを相談する杉山さん。

――理想の排便を目指すのではなく、まずは日々の自分の便の状態を知ること。そこで参考になるのが、図のような便の性状(ブリストルスケール)。

ブリストルスケールは神山さんの資料を元に編集部にて作成。

便の形を硬さと形状によって7段階に分類したもので、自分の腸の状態を知る目安となる。3、4、5は理想的な便通で、数字が小さくなるほど腸内に停滞している時間が長く、便は硬くなり、逆に7は通過時間が速い、いわゆる下痢状態を指す。

神山 自分の食生活、生活習慣や健康状態を把握する上でも便をチェックするといいですよ。バナナのような形状が理想とはされますが、あなた自身の心身や生活習慣、食事などと便がどうリンクしているかを知るのに役立ちます。毎日同じでないのも当たり前で、便の状態を日々見ることで、自分なりの健康指針に役立てられます。

杉山 なんだかすごく気分が楽になりました。数日間便が出なくても、少々硬くても、これと言って体調不良は感じていなかったので、これが私のペースだと思えば、悩むことはないですね。

――人と比べて自分の腸の良し悪しを診断せず、実際出てきた便と普段の生活習慣などから腸を知ることが大事とわかったが、腸を整える、いわゆる“腸活”はどのように実践すればいいのだろう。

神山 腸を整えて便通を正常化したいなら、食物繊維は必須です。

杉山 子どもと食事を共にしているので、その辺は大丈夫かと……。

神山さんが見せてくれたのは食品ごとの食物繊維量の表。丼ものは1人前でも3g以下が多く、ごぼうは1本食べても10.3g。
食物繊維を充分に摂るのは大変なんですね!と杉山さん。
神山さんが見せてくれたのは食品ごとの食物繊維量の表。丼ものは1人前でも3g以下が多く、ごぼうは1本食べても10.3g。
食物繊維を充分に摂るのは大変なんですね!と杉山さん。

神山 残念ながら、足りていると言っている方も不足しているのが現状です。便の固形成分の約30%は消化できなかった食べ物の残りですが、ほとんどの食べ物が消化されてしまう中で、大腸まで届くのが食物繊維です。杉山さんが便秘と思われていたのも、食物繊維が不足していて便の量が溜まりづらかったからかもしれません。食物繊維は女性なら1日18gは摂ってほしいのですが、40代女性の平均摂取量は12.2gというデータがあります。

杉山 食物繊維が豊富なイメージのあるごぼうを1本食べても、10.3gしかないんですね。これでは私も充分摂れていないはず。

――食物繊維を積極的に摂ると、便通を正常化する以外にも様々なメリットがある。一部の食物繊維は、腸内に棲んでいる善玉菌のエサとして利用され、発酵性の高い食物繊維は、健康に寄与する成分(短鎖脂肪酸)を作ってくれたりする。

神山 生活習慣病の原因ともされる、血糖値の急上昇を抑えてくれるのも食物繊維の働きの一つです。医療の現場でも、様々な可能性のある食物繊維のサプリメントを紹介するところが増えています。中でも、グアーガム分解物(※)というエビデンスが報告された食物繊維には、医師の立場からも注目しています。とにかく、食物繊維は食べ溜めができないので、いろいろな方法で毎日摂ってほしいですね。

杉山 今よりもっと食物繊維を意識して食事に取り入れてみます。その程度の“腸活”なら実践しやすいですよね。自分の体と便がどう変化していくのか、チェックするのが楽しみです。

神山 それ以外に、排便に重要な自律神経のバランスを整えることも大事なので、生活習慣を見直すこと、ウォーキングやストレッチなど適度な運動習慣を身につけることなども取り入れてくださいね。

※グアー豆というマメ科の植物を精製して得られる食物繊維。国内約2000カ所以上の医療、介護施設でグアーガム分解物を含む食品が採用されている。


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