誤解も多いがん治療。がんと診断された時のためのQ&A。
撮影・岩本慶三 文・及川夕子
Q.がん治療後、10年経ちました。もう安心ですね?
A.がんは、5年過ぎると再発率が下がるので、目安として治療後5年、または10年を過ぎれば治癒と診断されることがあります。
しかし、10年を過ぎたからといって、絶対再発しないとも、安心とも言い切れません。がん細胞には血管やリンパ管の中に入り込む性質があり、最初の治療でがんが消失できたかのように見えても、ミクロレベルでがん細胞が潜んでいる可能性があるからです。それが何年も経って、他の臓器へ転移した後に見つかることがあります。これが再発です。どんながんも例外はあり、再発は起こり得ることです。
ネットなどには、「私はこうしてがんを克服した」「がんは克服できる」といった情報があふれていますが、がんの専門家として、こうした情報には大いに違和感を覚えます。再発したがんを抱えながら、立派に生活していらっしゃる患者さんもいます。がんが再発していないから「克服できた」ことにするのは、おかしいと思うのです。
がんと診断された方は、全員が「がんサバイバー」です。それに今は、再発してもうまく共存していく道があります。克服した、克服していないと区別するのではなく、がんと向き合うすべての人が安心して暮らせるように、応援していける社会にしていきたいと思いませんか。
Q.ステージ4と言われ、担当医に「打つ手はない」と言われました。治験や最新治療を受けてでも治したいのですが。
A.医師は「打つ手がない」などと言うべきではないですね。緩和ケアも治療の一つであり、生活の質を高めていくことで延命効果が得られるという研究結果があります。無理に積極的治療を行うことはかえって体力を落とし、命を縮めてしまう恐れもあります。どの程度治療を行うかは、患者さんの人生観も重要になりますが、腫瘍内科医などの専門医に、一度意見を聞きに行ってほしいと思います。
なお治験は、医薬品などの効果を確かめるために行われる臨床試験のこと。必ず効果が出るとは限りませんが、治療選択肢の一つになると思います。
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『クロワッサン』956号より
●勝俣範之さん 腫瘍内科医/がん患者が抱える問題に対して共に悩み・闘うがんの総合内科医として、日々の診察や医療情報の発信に尽力。
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