からだ

Vol.18尿もれが気になります。【40歳からのからだ塾WEB版】

骨盤底筋群とは、尿道、膣、直腸が通っていて、骨盤内にある臓器を下から支えている筋肉の集合体のことですが、まず、妊娠すると、重たい子宮を支えるために骨盤底筋群に負担がかかります。出産時には、それが断裂したり伸びたりして大きなダメージを受けることが多いです。また、産後には、赤ちゃんを抱っこすることによって、さらなる負担がかかります。そして、更年期以降は、女性ホルモン(エストロゲン)減少の影響により、筋繊維が減る・薄くなるなどして、骨盤底筋群自体が弱まります。
こうして女性に起こるライフイベントを順に追っていくと、骨盤底筋群への負担がいかに大きいかが、よくわかりますよね。
実際、産後に尿もれを訴える人は4割もいるそうです。
「産後の尿もれも、いったんは治ることが多いのですが、その後、年齢とともに骨盤底筋群が弱ってきて、頻尿や尿もれなどが起こりやすくなります。骨盤底筋群の支えがさらに弱まると、子宮が飛び出てくる“子宮脱”になる人もいます」(宋さん)

骨盤底筋群を構成する筋肉

骨盤底筋群を構成する筋肉

骨盤底筋群は、何層にも走行した筋肉の集合体からできていて、尿道、子宮、膀胱、直腸などの骨盤内臓器を下から支えている。

産後すぐの運動やダイエットは骨盤底筋を傷める可能性も

今回、誤った運動法や日ごろの生活習慣が、骨盤底筋群のダメージになり得る場合がある、という事実にも驚かされました。
「床上げ3週間といいますが、産後しっかり休むことは、骨盤底筋にとってもよいこと。なぜなら、出産でダメージを受けた骨盤底筋群が元にもどるのに、通常3〜6週間かかるからです。その間に、重い赤ちゃんを抱っこしたり、早く体型を戻したいからと不適切な方法で腹筋運動をしたりすることは、骨盤底筋群へのダメージを助長するようなもので、ほめられるものではありません。本来、産後は、無理をせず心身の回復に努めたほうがよいのです」(宋さん)
例えば、お腹を折るような(肩と骨盤を接近させるタイプの)腹筋運動は、骨盤底筋群にかかる圧力を増してしまうのだそうです。

このほか、慢性的便秘、咳の症状があるなど、腹圧がかかる生活を長年続けると、骨盤底筋群が疲弊して弱くなる可能性があるということです。

とはいえ、対策がないわけではありません。
「骨盤底筋に負担をかけない生活をする方法を学ぶことで、将来の尿もれや子宮脱といった問題は減らすことができる。そのことに気づいてほしいですね」と宋さん。最近注目されている、「ガスケアプローチ」という予防法があるので、後ほど紹介しましょう。

腹圧性尿失禁の診察と治療法

まずは、今、困っている尿もれへの対処から。
尿もれの症状かも? と思ったら、女性泌尿器科や婦人科を受診し、尿もれのタイプや状態(手術が必要かどうか)を診てもらいましょう。診察では、ほかの病気が隠れていないかを調べるために、検査を行うこともあります。
「腹圧性尿失禁は、軽いものなら骨盤底筋を鍛える体操で改善できるとされており、実際の治療では、骨盤底筋体操を指導されることが多いです。骨盤底筋体操で改善しない場合や不満足な場合は、手術適応となり、ポリプロピレンメッシュのテープを尿道の下に通してサポートする手術法などがあります。切迫性尿失禁の場合は、骨盤底筋体操のほかに薬物療法などがあります」(宋さん)

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