からだ

“ゆるゆる漢方家”による、潤いをキープする秋の養生。

薬をのむほどじゃないけど、なんとなく調子が悪い。そんな季節の不調が毎日の暮らし方と食材だけで改善します。
毎日、店頭で健康相談を行い、漢方の理論をやさしく伝える“ゆるゆる漢方家”櫻井大典さんに聞きました。
  • 文・土田由佳 イラストレーション・浜野ふみ子

秋の養生

冬に備えてしっかりと潤いをキープ。過度な発汗は禁物。

早寝早起きをして肺いっぱいに深呼吸。

秋のキーワードは「肺」です。呼吸により外気と通じている肺は、潤いを好み、乾燥を嫌います。しかし、夏のむっとするような湿気が薄れ、空気の乾燥が著しくなる時期なので、肺は乾燥しやすくなり、気管支系のトラブルが起きやすくなります。

部屋では加湿器を使ってしっかりと潤いを保ち、マスクをするなどして、乾燥と冷たい風に気をつけるようにしてください。乾燥を助長する、長風呂やサウナ、岩盤浴、ホットヨガなどによる過度な発汗には、くれぐれも気をつけることです。

そして、早寝早起きを心がけ、朝のきれいな空気を肺いっぱいに取り込んで、気持ちよく一日をはじめましょう。肺を元気に保つには、しっかりと深い呼吸をすることです。

おすすめの食材は、潤いを補うものです。これからやってくるのは、乾燥する季節の冬。それに備えて秋に潤いを蓄えておくことで、冬を快適に過ごすことができるのです。

潤いを補う食材は、豆腐や湯葉などの大豆食品、緑豆、葛粉、梅干し、きゅうり、冬瓜、れんこんなど。「柿が赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるように、秋が旬の柿もいいです。もちろんそのままでもいいのですが、とっておきの食べ方をご紹介しましょう。

柿のヘタ部分を横に切り、皮と果肉の間に軽く切り込みを入れて、トースターで皮がパリッとするまで10分ほど焼きます。ホカホカ&トロトロの焼き柿は、肺を潤し、鼻やのどの粘膜を健やかに保ちます。

また、大根、ねぎ、からしなど、少量の辛味をとることで、肺を強く保つことができます。

日中に太陽を浴びてエネルギーをチャージ。

肺は悲しみの感情と関連しているので、肺が弱るともの悲しくなります。秋はセンチメンタルな季節とよくいわれますが、これは、肺の機能低下が関連していると漢方では考えられています。ゆったりとして、焦らず、できなかったことを悔やまず、おおらかに構える心持ちが大事です。

日照時間が短くなるこれからの季節は、気分も落ち込みやすくなります。日中にしっかりと太陽を浴びましょう。太陽がもつエネルギーが体を温めて元気にしてくれます。

【空咳】潤うものを食べ、乾燥を防ぐ。

暑い夏にしっかり汗をかかなかった人は、熱が体の中にこもり、秋になって乾いた咳が出ることが多いかもしれません。空咳には、潤いのもとであるれんこん、長いも類、ゆり根、梨を食べること。

特におすすめなのは薬膳デザートの「蒸し梨」。梨のヘタの部分をふたになるように横に切り、実の部分の芯をスプーンでくりぬきます。そこに氷砂糖3〜4粒と水を大さじ1、生のしょうがスライスを1枚入れます。切ったヘタでふたをし、40〜50分蒸します。梨を一口大に切って、電子レンジで約3分加熱するだけでもいいです。

とにかく潤うものを食べて潤すことが大切。マスクや加湿器などを使い、乾燥を防ぐ工夫も心がけましょう。そして、汗をかくようなことは避けてください。体から汗が出れば余計に乾燥してしまいますから。岩盤浴やサウナ、ホットヨガなど、大量に汗をかく場所には行かないようにしましょう。

【頻尿・尿もれ】尿トラブルはむき栗で撃退。

夏バテして胃腸の働きが悪くなると、秋に栄養やエネルギー不足が起こり、腎や膀胱の機能が低下。頻尿や尿もれが起きやすくなります。疲れると頻尿や尿もれは悪化するので、働きすぎは禁物です。胃腸に負担かける脂っこいものや味の濃いもの、生もの、冷たいもの、過剰な水分はひかえましょう。

また、加齢に伴って腎が弱ると、尿を出して止める力が弱まるため、更年期を迎える頃になると、尿のトラブルが起きやすくなります。

おすすめの食べ物は栗です。加糖されていない「むき栗」がいいですね。クルミやぎんなん、クコの実などの木の実全般がおすすめです。

冷え性の人はその冷えが原因かもしれません。普段から体を冷やさないように心がけること。カイロを腰に貼ったり、足湯もいいです。しょうが、にんにく、ねぎなど体を温める食べ物をとりましょう。

【肩こり】1時間に1回の深呼吸と肩まわしで予防。

肩こりの原因は血行不良。秋が深まると気温も低くなってきて、ついつい肩に力が入り、筋肉が緊張状態になって血管が収縮して血行が悪くなります。ほかにストレスや疲労、目の疲れ、偏食や暴飲暴食がもとになる場合も多いです。

肩こり対策の第一歩は、深呼吸と肩まわし。これで滞った血流をよくします。パソコン作業などのデスクワークでは、何時間も同じ姿勢でいることが多いので、1時間に1回は立ったり歩いたり、深呼吸や肩をまわしたりして血流を促すようにしましょう。

肩がこったら、もんで血流をよくしようとしがちですが、血管はすべてつながっているので、末端の流れが悪くなっていると、いくら肩だけをもんでも流れません。全身を動かすほうが効果的です。

血行をよくするおすすめの食べ物は小松菜。胃腸の働きもよくして、便通も促します。

櫻井大典

お話を伺ったのは

櫻井大典 さん (さくらい・だいすけ)

ゆるゆる漢方家

「成城漢方たまり」 で健康相談を行っている。アメリカの大学で心理学を学び、帰国。国際中医専門員。『食べる漢方』(マガジンハウス)監修、主な著書に『まいにち漢方食材帖』(ナツメ社)など。

『Dr.クロワッサン 不調が消える、ふだん漢方』(2020年1月28日発行)より。

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