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軽減したい、日常のストレス。でもその解消法、合っていますか?

ストレスフルな毎日への対処、自己流で逆効果になっているかも……。メカニズムを正しく知って、効率よくラクになりましょう。
  • イラストレーション・山下カヨコ 文・板倉みきこ
梶本修身(かじもと・おさみ)さん●「東京疲労・睡眠クリニック」院長。医学博士。疲労医学の第一人者として睡眠の質を回復させる診療を行う。『誰でも簡単に疲れをスッキリとる方法』(アスコム)など著書多数。

ストレスを心身にとっての負担と捉え、悪者にするのはやや間違った考え。

「本来、ストレスがかかると自律神経の交感神経が優位になり、アドレナリンなどのホルモンが分泌され全身が活動モードに変わります。これは自然な体の機能で、もともとは動物が危険から身を守るために起こる反応。その結果免疫力は上がるし、体の機能自体が活性化されるのです」(梶本修身さん)

人間にとってストレスは必要なものだが、度を越した時点で問題となる。

「強く、長期間続くストレスは自律神経を興奮させ、神経細胞において活性酸素が過剰に分泌されます。そのことで神経細胞は錆びた状態になります」

過剰なストレスは細胞の錆=酸化を起こし、自律神経の疲弊を招き、疲労を起こす。疲労は充分な休養によって回復する余地があるが、それが長く続き慢性化するとやがて不可逆的な老化を招く。

「神経細胞の錆を取るには休息が一番大事。また、時間がたつほど回復が難しくなるので、日々のストレスをためこまないよう、早めに疲労を解消させ錆びにくい体を維持すべきです」

そこで大切なのが、日常のストレス解消法だが、思いこみやニワカ知識も多い。

「脳の働きで本来の疲労がごまかされ、逆に心身を酷使してる場合も多々。ストレスの感じ方、疲労の度合いは個人差があり、生活習慣や遺伝などでもストレス耐性は変わりますが、もっと体の発する声に素直に応じてほしいです」

これを機に、今までやっていた自己流のストレス解消法を改めてみよう。

× 仕事は忙しいが 楽しいので問題ない。

「動物に比べ、人間の脳は意欲や感情、いわゆる理性などを司る前頭葉が発達しています。忙しくて疲弊しているはずなのに楽しいから大丈夫と思うのは、この前頭葉が疲労を感じないようにコントロールしている可能性大です」

仕事の成果に対する達成感、収入アップなどの満足感につながる“やりがい”があれば、たとえ激務でも喜びのように感じてしまう。

「この“やりがい”という感情は要注意。前頭葉は欲の塊みたいなもので、目の前にエサ(報酬)を吊り下げられると疲労感を消し、報酬を取ってしまう。朝起きて疲れが残っているなら脳は確実に疲弊しています。仕事の発散をスポーツに求めるのも大間違い。自律神経に負担がかかり、体調不良を招きます。ちょっとした疲労のサインを無視しないことが大事です」

○ 日記を書いて頭を整理する。

イヤなこと、つらいことは文字にし、問題と直面するのがいい。

「悩みを箇条書きにしましょう。感情を書き連ねるのではなく、端的に書くのがポイント。悩みが明確になったら、解消できること、できそうなこと、できないことに分類します。できることは解消しようとやる気が出るし、できないことは考えても仕方がないと諦めがつきます。この諦めが一番重要。妬みや恨み、悩みが尽きないのは諦めきれないから。仕方がないと割り切ることで心の負担が減ります」

△ カラオケで歌ってストレス解消。

「適度なストレスに対してなら有効でしょう。でも、歌ってもスッキリしない、寝ても疲れが取れないなら、過度なストレスが加わった状態。人前で緊張して歌うとかえって疲労が増してしまいます」

この場合の疲労は、内臓疾患などがあるなら体が原因とも考えられるが、健康な人ならほとんどが脳、自律神経の疲れが原因。

「脳を回復させるため、質の良い休息をしっかり取りましょう」

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