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【山内マリコさんインタビュー】あの頃、胸ときめかせた商店街の現状は!? 『メガネと放蕩娘』

あの頃、胸ときめかせた商店街の現状は⁉

やまうち・まりこ●1980年、富山市生まれ。2012年、地方に住む女性たちの鬱屈を描いた連作小説集『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。映画化もされた『アズミ・ハルコは行方不明』、『あのこは貴族』など著書多数。現在、東京在住。

撮影・土佐麻里子

富山で一番にぎやかな街のすぐ近くで育った山内マリコさん。

「田舎ながらに、高校生がときめきながら繰り出せる街が、当時はあったんです。それが2000年を境に、郊外に大型チェーン店が増え、街から目に見えて人がいなくなった。大学生になり、帰省のたびになじみある景色が変わっていったことをよく覚えています」

ずっと大都市に暮らす人にはピンとこないかもしれないが、そうでない人はみな、にぎやかだった商店街がシャッター街などと言われて久しいことに胸中複雑なのではないだろうか。山内さんが今作で描いたのは、そんなさびれつつある商店街を盛り上げようと、書店に生まれた姉妹が大学生や市役所の人などと奮闘する物語。

「退屈な地方都市から連れ出して、という作品で世に出た分、故郷に対しては後ろめたさもあり、ずっと恩返し的なことがしたかったんです。それに、30代になって自分の立場や役割も変わりました。20代ならただ嘆いていてもいいけど、30歳を過ぎたら自力でなんとかしろって感じでしょう(笑)。私自身も無力な若者ではなくなり、お節介おばちゃんにシフトチェンジしつつある今、同じ地方都市を舞台に、ポジティブな話を書きたかったんです」

しかし、街を再生させるのは、一筋縄ではいかない難事業だ。頭の固い老人たち。子どもに後を継がせたがらない商店主……。

「地方の商店街がどういう現状なのか、取材で得たものを出来る限りストーリーに落とし込みました。活気がない原因や抱えている問題を、読者の方にも知ってもらいたくて」

小説の中で姉妹は、手作りイベントを仕掛け、フリーポケットという実験的な店を作り出す。

「実は同じ名前の店が’90年代の富山市にもあって、私もお客さんとして通っていました。聞けば、当時20代の姉妹が、若者向けの創業支援の場として立ち上げていたんです。ショップインショップのようなかたちで、お店をやりたい人に格安でスペースを貸す仕組み。そんな事情を知ったら、郷土愛がむくむく醸成されて、これはカタチにしなくちゃ、と思いました」

“街”は彼女の作品にとって、単なる書割ではなく、そこに住む人を育む、大切なものなのだろう。

「地方の人が、自分ごととして仮託できる小説って少ない気がするんです。この状況、ああ、私たちの話だ、って日本全国で思ってもらえたらうれしいです」

文藝春秋 1,500円

『クロワッサン』966号より

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