しかし、街を再生させるのは、一筋縄ではいかない難事業だ。頭の固い老人たち。子どもに後を継がせたがらない商店主……。
「地方の商店街がどういう現状なのか、取材で得たものを出来る限りストーリーに落とし込みました。活気がない原因や抱えている問題を、読者の方にも知ってもらいたくて」
小説の中で姉妹は、手作りイベントを仕掛け、フリーポケットという実験的な店を作り出す。
「実は同じ名前の店が’90年代の富山市にもあって、私もお客さんとして通っていました。聞けば、当時20代の姉妹が、若者向けの創業支援の場として立ち上げていたんです。ショップインショップのようなかたちで、お店をやりたい人に格安でスペースを貸す仕組み。そんな事情を知ったら、郷土愛がむくむく醸成されて、これはカタチにしなくちゃ、と思いました」