くらし
読む・聴く・観る・買う

『こわいもの知らずの病理学講義』仲野 徹さん|本を読んで、会いたくなって。

大阪のお節介なおっちゃんが書きました。

なかの・とおる●1957年、大阪生まれ。大阪大学医学部医学科卒業。現在は大阪大学大学院医学系研究科病理学教授。専門は細胞がどうやってできてくるのかを研究する、発生学。趣味はノンフィクション読書、僻地旅行、義太夫語り。

撮影・青木和義

大阪大学医学部の人気講義「病理学総論」の内容を書籍化した『こわいもの知らずの病理学講義』は、著者のボケとツッコミを挟みながら、細胞や血液の仕組み、病気の成り立ちが解説されている。

「医学が進歩して、病気に関する情報量や治療の選択肢が格段に増えてきました。そうなると、患者さん側もある程度の知識を持っていたほうがよいのではないかと思い、この本を書くことにしたんです。病気や死について話すのは縁起でもないという風潮がありますが、この本を読んで、病気になったらどんな治療を望むかなどを、家族や周りの人と話してもらいたいなと思って」

例えばアンジェリーナ・ジョリーさんの乳房切除について医学的に解説している項では、がんが環境要因と遺伝的要因の両面から解説されていて、すぐにでも友人との会話のテーマになりそうだ。

とはいえ、普段は大阪大学医学部の学生向けに行われている講義の内容。ボケとツッコミの雑談部分はいいものの、本論の部分はかなり高度な理解力を要する。

「よく雑談の勢いで本論も語ってくれと文句を言われます(笑)。専門用語がたくさん出てくるので、なかなか頭に入っていかないんやと思います。皆さん医学部の学生じゃないわけですから、大阪のお節介なおっちゃんが何か言ってる、くらいに軽く読んでもらってけっこうです。でも、なんとなく知っているだけで、インターネットの情報に踊らされづらくなるでしょうし、病気になったときに医師と話をしやすくなると思います」

仲野徹さんは1981年に医学部を卒業し、臨床やドイツ留学、研究を経て10年ほど前から病理学教授として学生に指導している。

「今の学生が実際に活躍するのは20年後。その頃には、AIが医療のあり方を変えていくのではないかと思っています。AIは関連論文などをすべて取り込めるわけですから、もしかしたら名医を上回る時代がやってくるかもしれません。

今生まれてくる子どもの半数は100歳まで生きるという説がありますが、そうすると脳神経系の疾患も、死因の上位になってくるのではないでしょうか」

では、仲野さん自身は “どのような死に方” を望むのだろうか。

「痛いのはイヤ(笑)。がんだと家族との別れの時間があるという話もありますよね。そのときは無理せずホスピスに入って、できるだけしんどくない方法で死んでいきたい。でも、いざとなったら一日でも長く生きたいと意地になるかもしれませんが」

晶文社 1,850円

『クロワッサン』965号より

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

SHARE