小松さんがそんな超多忙な植木さんを見ていて心がけていたことは、一日1回、植木等を喜ばせること。楽屋には毛布や布団を持ち込む。靴擦れしないように新品の靴は履いて慣らしておく。あるいは、衣装部屋に行く時間を省くべく着付けを覚えるといった具合だ。それは決してつらいことでもきついことでもなかったという。
「心から尊敬できる一流の師匠のもとで24時間そばにいられる。こんな幸せなことはなかった。ましてや『シャボン玉』でいえば5分のコントでも、演出家が構成作家にダメ出ししながら、練りに練った台本をリハーサルに1日かけて収録している。付き人として、そんな現場を生で見られるんです。月謝を払って学校で演劇や笑いを勉強するより、ずっと多くのことを深く学んだと思っています」