facebook instagram twitter youtube
読む・聴く・観る・買う

『トップリーグ』相場英雄さん|本を読んで、会いたくなって。

この国のメディアはおかしいんじゃないか?

あいば・ひでお●1967年、新潟生まれ。時事通信社で経済部記者として勤務する傍ら、作家デビュー。退社後、『震える牛』『ガラパゴス』『不発弾』など、ネタと現実のシンクロ具合が衝撃をもって迎えられる話題作を数多く発表している。

撮影・中島慶子

BSE、粉飾決算……日本が抱える問題を巧みに取り入れた小説で、その闇の深さを印象づけてきた相場英雄さん。最新作で、政治とメディアの関係の歪さを告発するため、主人公に据えたのは政治部の新聞記者。難しそうだが……。

「硬派な社会派と思われがちですが、たまたま扱うネタがエグかったり、現実的だったりするだけで、エンターテインメントを書きたいだけなんです。キャラはイメージしやすいように作ってますよ」

と笑う。なるほど、政治家の名やバックグラウンドはなんとなく実在の人物を想起させるし、 “東京死んじまえ” というブログが話題に出てくるのも、とっつきやすい。

「経済記者だった時代から、政治部って何やってんだかわからなくて(笑)。新聞もテレビも、政治のニュースって基本、横並びでしょう? なぜ、本当に知りたい話が出てこないのかという疑問がわき、後輩の政治記者に仕事の内容を簡単な文書にまとめてもらったのですが、その中に “トップグループ” という単語があった。見た瞬間、あ、コレだ!って思いましたね」

本作ではトップリーグと称されているのだが、これは特定の政治家に深く食い込んでいる各社の記者、数人のこと。主人公は官房長官との関係を深めていき、その過程で首相官邸のタブーに知らず近づいていくことになる。読み進めるとわかるが、そもそも政治家の話はオフレコで、記事にはできない。だから政治記者の仕事は “メモ” をとることで、本当に大事な情報は上司にも内緒なのだという。

「記事を書かず、情報屋のように永田町をうろうろするのはおかしいだろう、と。対象に食い込むこと自体が仕事になっては本末転倒です。実際、記者たちは様々なことを知っていながら、書かない。知ってるなら書けよ!って思います。昔はひとつの党の中にいろんな派閥があって、まだ風通しがよかったのですが……」

政界のより深くまで足を踏み入れるトップリーグの一員となった主人公は、一方で、娘の発熱による保育園からの頻繁な呼び出しに翻弄される平凡な父親でもあり、待機児童や病児保育という日常生活に直結する問題もまた、政治問題になることに気づかされる。

「僕も子育て時代に経験しましたが、今も状況は変わってない。いや、もっと深刻かもしれません」

遅々として進まない、そしてきれいごとだけではすまされない、政治というものの得体の知れぬ手ごわさが改めて胸にささる一冊だ。

角川春樹事務所 1,600円

文字サイズ