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『60歳。だからなんなの』秋川リサさん|本を読んで、会いたくなって。

これからやりたいことがたくさんあるんです。

あきかわ・りさ●1952年、東京都生まれ。’68年、資生堂のサマーキャンペーンでCMデビュー。以来、雑誌『アンアン』などでモデルとして活躍。2001年にはビーズアートの教室を開設。著書に『母の日記』など多数。

撮影・千田彩子

「私が生まれたときの家族写真が残っていますが、当時、祖母は58歳。着物を着て、白髪をお団子に結って、背中が丸くてすっかりおばあちゃんという感じでした。食べ物や化粧品のおかげだけじゃなくて人間は年取るのが遅くなっているのかな。まだやりたいこと、挑戦したいこともたくさんあるんです」

iPadを使って書き上げたという本書は、60代の秋川リサさんの本音が歯切れの良い文章で綴られている。

2人の子どもを育てながらモデル、女優、タレント、そしてビーズ刺繡の講師などをしてきた秋川さん。昨年は89歳の母親を2年間の在宅、3年間の有料老人ホーム、2年間の特別養護老人ホームでの介護の末に見送った。

「母は78歳のときに恋人ができたからと私の家を出ていったのですが、82歳のときに男性と別れて戻ってきました。それからしばらくして認知症の症状が出始め、介護が始まりました」

在宅介護は当時大学を卒業したばかりの22歳の娘と二人三脚で行った。仕事で疲れて帰宅すると、母の残した廊下の汚物に力が抜けるような日々だったという。

「もし母が認知症にならなかったら、介護なんて自分には縁のないことだと思っていました。私は大丈夫、絶対に認知症にならない!と根拠のない自信も持っていましたしね」

そしてこの介護経験をきっかけにひょんなことから有料老人ホームで働くことになった。朝から8時間、月に12日。2年間続けた。

「介護士さんたちの過酷な労働環境を目の当たりにしたし、自分が60代だと明日はわが身、いつか自分もこうなるんだということを切々と感じましたね」

いつ何が起きてもおかしくない、ひとりで暮らしていたら、倒れていても誰にも気づかれない、そう考えた秋川さんは、子どもたちが独立して空いた部屋を留学生などに貸すことにした。

「主に娘の友人たちなのですが、誰かしらいる家って楽しいですよ。おいしいごはんを作ると、それを目当てにやってくる若い人も多いんです。食べさせてあげるから、これ、教えてって、スマホの使い方とか若い人に聞くことができる。 “餌付け” ですよ、餌付け(笑)」

ジュエリーコーディネーターの資格を取り、つぎは日本語教師の資格に挑戦しようと考えている。
いまどんな悩みを抱えていても、人生は最後まで自分が主役。爽やかな読後感に包まれる1冊だ。

さくら舎 1,400円

『クロワッサン』963号より

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※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

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