在宅介護は当時大学を卒業したばかりの22歳の娘と二人三脚で行った。仕事で疲れて帰宅すると、母の残した廊下の汚物に力が抜けるような日々だったという。
「もし母が認知症にならなかったら、介護なんて自分には縁のないことだと思っていました。私は大丈夫、絶対に認知症にならない!と根拠のない自信も持っていましたしね」
そしてこの介護経験をきっかけにひょんなことから有料老人ホームで働くことになった。朝から8時間、月に12日。2年間続けた。
「介護士さんたちの過酷な労働環境を目の当たりにしたし、自分が60代だと明日はわが身、いつか自分もこうなるんだということを切々と感じましたね」