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『祝言島』真梨幸子さん|本を読んで、会いたくなって。

どうしても人の裏の裏まで描きたい。

まり・ゆきこ●1964年、宮崎県生まれ。2005年『孤虫症』(講談社文庫)でメフィスト賞を受賞しデビュー。’11年に文庫化された『殺人鬼フジコの衝動』(徳間文庫)がベストセラーになり、イヤミスの女王と呼ばれる。最近の趣味は遺跡巡り。

撮影・三東サイ

イヤミスの女王は、よく笑う。

「猫を飼って、縄文時代に興味を持ち始めたら、ナワバリって大切だなと感じますね(笑)」

真梨幸子さんと雑談していると、日常の中にミステリーのヒントを見つけて、アイデアにまとめる過程を目の当たりにするようだ。

「平和に暮らす条件はナワバリを互いに尊重しあうこと。善意や正義の名の下にナワバリを越えて干渉するとき、争いが生まれるんです。個人も集団も一緒(笑)」

関心を抱かなければきっと平穏に過ごせたのに、祝言島に一度でも興味を持てば呪縛から逃れられなくなる。物語のヒロイン、九重皐月もその一人である。

「彼女に力を貸してくれそうな人たちは、みんな想像の斜め上を行く裏面がありますね(笑)。

裏の裏もあったり……私には葛藤があって、エンターテインメントを書く上では善と悪をはっきり分けて勧善懲悪にしたほうが読みやすいと思うんですが、どうしてもそれができない。悪を悪として断罪しないまま、結局いい人まで悪い人になって終わっちゃう(笑)」

とくに皐月の母親の、幾重にも折り重なる娘への干渉ぶりが印象に残る。愛憎が重苦しい。毒親かなと思って読み進むと、祝言島の呪いで皐月に二重苦、三重苦を及ぼしていたと徐々にわかって怖い。

「設定も複雑だし、登場人物も多いし、時系列も前後しますが、それでも楽しんで読めるようにと心を配っています。人物も設定もシンプルにしたほうがいいのかなと常に悩みますけれど、そういうのはほかの方に任せて、余韻が楽しめる作風を私自身つきつめようと、昨日お風呂で覚悟しました(笑)」

一大決心の翌日にインタビューできるとは……設定は複雑だけど読みやすい真梨さんの作風、ぜひ、つきつめていただきたい。

「小学生の私が夢中で小説を読むようになったのは、横溝正史の作品がきっかけなんです。

国語の教科書で読む小説には、高尚でも話が面白くなかったり、回りくどい文章のものがあって、あまり興味ありませんでした(笑)。ところが横溝正史の『犬神家の一族』や『獄門島』などは小学生の私も一晩で読んでしまう。最後までページをめくらせる力がありました」

そういえば『祝言島』は横溝正史の世界を彷彿とさせる。

「はい、子守唄が出てくるのも敬意を込めてのことです。懐かしいけど一回りして新鮮に感じられそうな先達の技を、今回取り入れました。メインのトリックのほかにもSF的な題材をつめこんだので、最後まで楽しめると思います」

小学館 1,500円

『クロワッサン』961号より

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