自分の身の回りのことができなくなった母の代わりに衣替えをしたり、新たな下着を買ったりしなくてはいけない事態にあわてふためいた。そもそも、フリーのノンフィクションライターである松浦さんは日頃から取材や執筆に忙しく、母の生活ぶりをじっくり観察したことなどなかったのだ。
「父は、13年前にがんで亡くなりましたが、余命がわかった時点で書斎を片づけ、友人たちに会いに行き、やるべきことは全部やって意思的に締めくくったという感じでした。最期まで頭もはっきりとしていて母とはある意味対照的でしたね」
松浦さんにとって初めての介護。知識不足からひとりで問題を抱えてしまい、ストレスから自身の身体や精神にも変調をきたした。しかし、弟と妹のサポート、介護のプロであるヘルパーさんのアドバイスや公的な介護サービスを受けることによって少しずつステップを上がっていく。