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『あなたの夫は素晴らしい人だと叫びたくなる』渡辺千穂さん|本を読んで、会いたくなって。

結婚、夫、夫婦っていいなと思ってほしい。

わたなべ・ちほ●1972年、東京都生まれ。2002年にドラマ『天体観測』で脚本家デビュー。代表作に映画『レインツリーの国』、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』など。ドラマ『ウチの夫は仕事ができない』(日テレ、土曜夜10時)が終盤に。

撮影・中島慶子

テレビドラマや映画の脚本家として活躍する渡辺千穂さん。プライベートでは、2014年にフリーアナウンサーの羽鳥慎一さんと結婚し、2016年1月に43歳で女の子を出産したことでも話題になった。そしてこのたび、初めてのエッセイを書き下ろした。テーマは夫婦と夫にまつわる家族の話だ。

「20代、30代は独身生活を謳歌しつつ、仕事に没頭していました。それを経て40代で結婚、出産と、立て続けにさまざまな経験をして、いまなら自分の考えが及ぶところがあるかなと思いました」

といっても、私生活の話ばかりではない。周囲のママ友へのリサーチや、携帯電話に登録されている昔の友人の話を思い起こした上で披露されるエピソードは、それぞれがひとつのドラマのよう。たとえば、離婚後10年にわたって解決金という慰謝料のようなものを元妻に払い続けた男性が、完済後に同じ相手と再婚した話。

猫好きな妻のためにアレルギーをひた隠しにしていた夫の話。書名になっているのは、渡辺さんが子連れで出かけた時に、駅や街で途方にくれていると、普通のサラリーマンが快くベビーカーを運んでくれたり、タクシーを停めてくれた体験談がもとになった一章だ。

「本当に自分で感じたことだったんです。その人たちが家庭で協力的な夫かどうかはわからないけれど、そういうやさしい一面をあなたの夫は持っているということに気づいてほしくて」

渡辺さんが取材した中でも、妻から夫への愚痴はたくさん。ただ、そこに男の立場など、別の見地を織り交ぜてくれるのはさすが脚本家。浮気の疑いも、相手を思いやっての隠し事が原因の誤解かもしれない。夫婦関係だけでなく、ママ友のグループから孤立してしまうケースや、結婚がきっかけで友情の形が変わってしまう女友だちなど、いろんな気持ちの機微が描かれ、切実に胸に迫る。底辺に流れるのは、人間への渡辺さんの真っすぐでやさしい視線だ。

当初はひとつの章をもっと短くする予定だったが、最初の読者である担当編集が “この話の続きが気になって仕方がない” と、さらなる書き込みを依頼した。

「脚本は自分で結末を決めて、ここに泣き所があってなどと構成をきっちり考えてから書くけれど、エッセイは脱線しそうになりますね。のるとどんどん書き進めてしまって、これどうやって戻せばいいんだっけ? ということも。すごく楽しかったです」

マガジンハウス 1,300円

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