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『さらにわかった! 縄文人の植物利用』工藤雄一郎さん/国立歴史民俗博物館・編|本を読んで、会いたくなって。

縄文時代の研究は日進月歩なんですよ。

くどう・ゆういちろう●1976年生まれ。大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館 研究部 准教授。著者らが企画した展示『URUSHIふしぎ物語―人と漆の12000年史―』が国立歴史民俗博物館で9月3日まで開催中。沖縄に巡回。

撮影・新井孝明

縄文といったら土器とか土偶のイメージが強いけれど、土器より前に高度な植物利用が発達していたというから驚いた。

「例えば、編みかごです。縄文時代草創期の土器には、縄目というより編みかごの編み目に酷似した文様を施したものが多い。これは土器を作る際に、植物の編みかごを模したからだと思われます」

図版の多い本なので、低湿地から出土した資料を参考に復元された編みかごと、初期の縄文式土器を見比べると確かに似ている!

「有機物は土中で分解されるので植物を用いた器や衣服などは土器に比べて残りにくいんです。低湿地の遺跡だと、水で空気が遮断されて日光も当たらず、数千年から1万年以上前の植物質の遺物が出てくる。そうした資料の研究や分析が進んできたのはごく最近です。従来の常識より、縄文時代の暮らしが豊かで美意識に富んでいたことが、実証的にわかってきました」

千葉県は佐倉市にある国立歴史民俗博物館で編著者の工藤雄一郎さんに会ったら、想像していたよりずっと若かった。失礼と思いながら年齢を聞いてみた。

「40歳です。低湿地の研究が盛んになったのは1970年代から’80年代なんですが、当時研究を始めた人たちがいま60代ぐらいになっていて、その成果を受け継いで研究をする私たちは第2世代か第3世代になります。私の専門は理化学的な年代測定を活用した考古学なんですが、植物学の人や分析化学の人と一緒に遺跡調査に関わってきた縁で執筆者兼 “鬼の取り立て役” をやっています(笑)」

縄文人の植物利用を解き明かす『さらにわかった!~』は4年前の『ここまでわかった!~』につづく第2弾で、日進月歩の研究をいずれ第3弾にまとめる予定だ。

「ウルシは日本に自生しない外来植物とされていますが、低湿地の遺物を樹種同定して年代測定すると1万2600年前の縄文人集落の近くにウルシが存在していたとわかります。7000年前頃には栽培して漆器作りが行われたようです。花粉分析などの成果で、集落に人為的なクリ林があったこともわかる。狩猟・採集・漁労の生活と考えられてきた縄文人ですが、積極的に植物を栽培して創意ある暮らしをしていたのです」

編みかごに集めたクリを入れて水に漬けて保存する。アクを抜き、蒸して食べる。クリの樹は燃料にも竪穴住居の建材にも役立てる。装飾性のある漆器を作る、豊かな縄文の暮らしが見えてきた。

新泉社 2,500円

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