「コウハイは私にとって初めての猫です。当時5歳だった豆柴が、ぼーっと暮らしていたので、何か刺激を与えたいなと。じゃあ猫はどうかしらと思ったんです」
保護猫の活動をしている友人の勧めで引き取った子猫は、石黒家の中をひととおり見回ったあと、まっすぐ「センパイ」豆柴のところに行って背中によじ登り寝た。
「猫って自分がこうしたいって思ったら、やってしまうんですね。2匹はすぐ仲良しになりましたが、コウハイはセンパイを立てています。最近、センパイが寝坊するようになってきたのですが、コウハイはさりげなくつついたり、近くにドスンと飛び降りたりしてセンパイを起こし、センパイが起きたら、そのあとからついてゴハンの場所に来るんです。そして “起こしたのはボクだよ” なんて主張しない。人間にほめられたいという欲求がないのでしょう」
コウハイと暮らすことで「猫の世界が一気に広がった」石黒さん。猫は、人を元気づける、猫は淡々と過ごす、猫は命いっぱいに生きている……とエッセイは続く。