幼少期を発展途上国で過ごした羽野は、「理解や共感には限界がある」と、自分の世界を守って他人と距離を取り、女性とも深い関係を築けない、ちょっと面倒くさい男。そんな羽野を取り巻く女性たちもまた、どこか不自由で窮屈そうだ。取材先の「先生」の愛人の理沙子に、仕事に結婚にと焦る同期のタナハシ、自分の不自然な美しさに悩むモデルの緋奈。
「私は普段京都で暮らしていますが、たまに東京に出てきて知り合いの女の人たちの話を聞くと、みんな息苦しそうだなと感じるんです。東京ではいろんな生き方が選べるけれど、決まった型から逸脱しすぎるとかっこ悪いから、自分を剪定しながら生きているように見える。都会に生きる人たちのそういう生態を、観察日記のように、淡々と描けたらと思いました」