救われるような言葉がたくさん。学校に行けないのはこころのせいじゃないということだったり、もう闘わなくてもいいよということだったり、そう言ってくれる大人の存在がどれほど大切か。描かれるのはこころの視点からだが、心配だからこそ対応に悩む母親や、登校すると決めた娘の自転車のサドルを磨く父親など、両親の心情も察するにあまりある。
「大人の援助にも気づいていく話にしたいと思ったんです。見方を変えたり、信頼してみてほしい。デビュー作の頃は圧倒的に気持ちが高校生に近かったのですが、今は母親がどういう思いでいるかもわかりますから」
最後まで読むと、子どもは「大人も昔は子どもだった」と、大人は「無関係な中学生の話と思ったら自分のことだった」と気づく仕掛けが。そして、伏線のすべてがつながり、未来を信じて生きていく力をもらえる圧巻のラストへ。