「生活の中で見聞きした出来事が他の素材と掛け合わさったときに全く違う風景が見えてくるんです。例えば『青空』という話の、高速道路で前のトラックからベニヤ板が飛んでくるシーン。これは私が実際に経験したことで、幸い事故にはなりませんでしたが衝撃的で。事実は単なる事実ですが、他の要素と結びついたとき初めて、物語として息づいてくるのです」
短編小説や長編小説、ノンフィクションに子ども向けの作品と、森さんの守備範囲は広い。
「長編はストーリー優先なので細かい描写を犠牲にすることもあります。逆に短編はディテールにこだわって書くことも。いずれの場合も、今日書いた部分を翌日読み返すと直したい部分が必ず出てくる。さらにその翌日に読むとまた直したくなってしまう。そのくり返しでなかなか進まないんです」
だから小説を書くのはつらい作業だけれど、自分の中で生まれた物語を完結させたいという思いのために書き続けているという。