「名作という評判を聞くと面白くなくても何とか名作と思い込もうと無理しがち。虚心になって無理を外していくと、よい作品はよいし、ダメな作品はダメです。賞というのは不思議なもので、よい作品が必ず受賞するとはかぎりません」
偏差値72が3作ある。新しい順に第155回の村田沙耶香「コンビニ人間」(’16年上期)、第100回の李良枝「由熙」(’88年下期)、第79回の高橋揆一郎「伸予」(’78年上期)。総じて辛口だから、評価の高い作品が未読だと読んでみたくなる。いいブックガイドだ。
「過去の受賞作は『芥川賞全集』に掲載されているので、公共図書館で読めます。ただ芥川賞の受賞作というのは、その年の文学の最高傑作ではありません。もともとは新人賞ですが、他に優れた作品のある作家に功労賞のように与えられて、受賞作が凡作というケースも多い。そうした背景についてもこの本に詳しく書きました」