『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良さん|本を読んで、会いたくなって。 | 読む・聴く・観る・買う | クロワッサン オンライン
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『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良さん|本を読んで、会いたくなって。

報われない運命に、思いを馳せてほしい。

ひがしやま・あきら●1968年、台湾生まれ。台北で過ごした後、9歳の時に福岡県へ移る。2003年、作家デビュー。2015年、『流』で第153回直木賞受賞。大学で台湾語の講師も務める。日本対台湾の試合があったら、劣勢を応援するタイプ。

撮影・青木和義

青春小説といえば、明るくポジティブで、でもすこしほろ苦い、なんていうイメージを持つ人も多いだろう。しかし、『僕が殺した人と僕を殺した人』は、兄を亡くしたばかりのユン、牛肉麺屋のアガンとダーダー兄弟、正義感の強いジェイ……。4人の少年たちの救いようのない運命に翻弄されていく物語だ。作者の東山彰良さんは、今作ではキラキラとした青春時代の裏にある、影を描きたかったと語る。

「影は色濃く、大きなものにしたかった。仲間を思う純粋な思いから生まれた計画のはずが、ちょっとしたはずみで取り返しのつかない結末を招いてしまう。それだけで充分つらいのですが、少年の1人は、やがて殺人犯になってしまう。しかも一人を殺しただけでなく、連続殺人鬼に。救いようがありませんよね。そして影を大きくするために、舞台を30年前と現在、台湾とアメリカを複雑に行き来させ、逆説的ですが、なるたけ明るく書きました。光が強いほど、影も濃くなると信じて」

メインの舞台、1984年の台湾は、東山さんが幼いころ過ごした思い出の場所だ。古き良き時代の日本と似たような、懐かしい雰囲気が漂っている。

「僕が当時住んでいた廣州街というのは、中国からの移民、いわゆる外省人が住んでいる地域でした。父は山東省、母は湖南省出身で、ルーツは中国なんです。家と家の垣根がとても低く、親類だと思っていたおばさんたちが実は血が繋がっていないということを、大人になってから知ったりして。それくらい密でした。友だちとのつながりも、ユンたちのように強く、太いものだった。その後、核家族化が進み、今は変わってきているようですが」

郷愁に浸れる一方、少年たちのままならない現実に困惑を覚える読者も多いだろう。

「僕にとっていい本とは、本を閉じた後に、数珠つなぎのように空想が広がっていく作品。きれいにまとまっているかどうかは問題でなく、本の内容を材料に、ずっと脳内で遊んでいられるときに満足感を得られるんです。そんないい読書体験の積み重ねが、執筆活動の原動力になっています。この作品でも、物語では表現していないところで、少年たちそれぞれにいろいろなことがあったはず。読者の方にも30年間で彼らが得たもの、失ったものとは何だったのか、そこに思いを馳せてもらえたら、とてもうれしいですね」

文藝春秋 1,600円
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