「引っ込み思案で思い込みの激しい真知子には、描いていてすごくイライラしましたが、彼女はウジウジしている分、相手を観察する時間が長い。その目を通して他の3人を見ることで、彼女たちへの理解が深まるのかもしれません」
冒頭、真知子が娘と墓地に佇むシーンは、小島さんが幼い頃に母親から聞いた話が元になっている。
「自分がオーストラリアに住むようになって、あんなに分かり合えないと思っていた母への見方が変わったんです。私より若かった母が、この街で私を産んで育てたと思うと、孤独だっただろうなって。真知子のモデルが母というわけではないけれど、あのとき赤ん坊を抱きながら母が見た風景はどんなだっただろう、という思いがこの小説を書くきっかけでした」
濃密で狭いコミュニティの中で、不自由さやもどかしさを抱えながらも仲を深めていく4人。ときに反発し、でもどこかで共感もしてしまう。大人の友情って、確かにこんなものかもしれない。