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『キッチハイク! 突撃! 世界の晩ごはん』山本雅也さん|本を読んで、会いたくなって。

おいしいの共有で誰とでも近づける。

やまもと・まさや●1985年、東京都生まれ。ニュータウン育ち。食で人をつなぐwebサービス「KitchHike(kitchhike.com)」共同代表。趣味はビールづくり、浅草探検など。好きなおふくろの味は、ロールキャベツ。

撮影・水野昭子

キッチハイク。聞き慣れないこの言葉は、旅先の見知らぬお宅を訪ねてごはんを食べる、つまり “キッチンのヒッチハイク” から作られた造語である。山本雅也さんはこの言葉を掲げて、1年半にわたる47カ国の世界旅行に出た。

「 “世界がもっと楽しくなるにはどうすればいいか” を10代の頃から漠然と考えていました。その答えの仮説が、 “一緒にごはんを食べて仲良くなれば、世界は楽しい。しかもおいしい” 。その仮説を検証するために、旅に出たんです。もちろん、旅を通して、それは正しいと確信しました。不思議なもので、食卓を囲むと、人はいち早く打ち解けられるんです。なぜか。 “おいしい” は宗教も人種も、あらゆるものをとっぱらって共有できるものだから。 “おいしい” に理由はなく、それだけで完結できる。ある意味で乱暴な正義なんですよね」

本著では、たくさんの食卓やそれを囲む現地の人々の写真とともに、山本さんが見て感じたものが、実況中継のようにレポートされている。読んでいるうちにお腹が空いてくること必至だ。

一番心に残った国は? その問いに、山本さんは困った顔をして答えた。

「どこの “国” かを答えるのは難しいですね。なぜなら僕は国ではなく、その国の中にいる “人” と交流してきたから。だから、どこの誰が一番変わり者だったか、なら答えられるんですけど。ウィーンのジェレミスなんて、黄色いスーツに赤ブチ眼鏡で、終始ハイテンションなおかしなヤツでした。初めて会うなり玄関先で、レッドブルで乾杯を強要されて」

現在、山本さんはキッチハイクを手軽に楽しめるwebサービス『KitchHike』を運営している。毎月700人がこのサービスで繋がって仲を深めており、国内で日本人同士を中心に得意な料理をシェアするケースがどんどん増えているという。

「外食とか、もてなしの特別な料理ではなく、いつものごはんはスゴいっていうことを、主婦の人たちにもっと認識してほしいですね。現地の人にとっては何の変哲もない毎日の食事が、僕にとっては珍しくて新鮮。同じように、僕たちが毎日食べている食事が、他の人の目には魅力的に映るんです。それは国籍が異なると面白いというわけではなく、隣の家のごはんも覗いてみれば楽しい発見がたくさんあるはず。だから、気を遣ったり遠慮せずに、もっと胃袋で交流していってほしいと思います」

集英社 1,600円
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