「これは佐奈という女が、りょうによって救われる話なんですね。佐奈のいる道場にりょうが現れなかったら、佐奈は突然いなくなった龍馬のことが何もわからないまま悶々としていたでしょう。龍馬の仇討ちに突き進むりょうに引っ張り回されることで、歴史に埋もれた龍馬の真意を偶然知ることになる佐奈は、りょうに出会う前の佐奈とは違う人生を歩むはずです」
本作が初めての時代小説と思えないくらいストーリーも心理描写も鮮やか。谷治宇さんは長年、漫画の原作者をしてきた。
「チャンバラが目に見えるようだとか、アクションシーンが面白いと評価されるのはうれしいです。自分の中で漫画や映像を思い浮かべた上で文章化する作業をしているからかもしれません。剣の動きとか、切っ先が描く弧線を表現しているときが楽しいんですよ」
目を輝かせて話す谷さんは本当に剣の動きをイメージしているように見える。『さなとりょう』も、もともとは漫画の企画だった。