では、わざわざポピュリズムと言うのはなぜか。なぜ、世界中で猛威をふるいはじめたのか。そもそもポピュリズムとは何なのか。
そんな初歩的な疑問に明快に答え、ポピュリズムがもつ諸相を、ヨーロッパや南米での実例を踏まえて描き出したのがこの本だ。
水島さんはオランダ政治が専門。「オランダを見れば、今後の世界の動向がわかると言われているほど、政治的、社会的イノベーションが進んでいます。移民や難民の受け入れにも寛容で、高度な福祉国家を発達させてきました」
ところがそのオランダで、2002年、ポピュリズム政党が総選挙の結果、第二党に躍り出た。
「フランス、ドイツ、イギリスでのポピュリズムのブレイクスルーは2010年代ですから、オランダの例を見れば、10年前にその予兆はあったのだと言えます」
こうした国々は、所得格差が小さく、福祉先進国で、民主主義が定着している。そんな国でなぜ?
「ポピュリズムは、民衆が物事を決める最終的な主体であると強調するからです。その民衆の生活を守るために、移民の排除が必要だと訴えるのです」