『Soliste[ソリスト]おとな女子ヨーロッパひとり歩き』寺田和代さん|本を読んで、会いたくなって。
旅に出るたび、人生がこれから始まる気が。
撮影・森山祐子
海外ひとり旅=若者のイメージを大きく変えた前著『ソリストおとな女子ヨーロッパひとり旅』から1年半。中高年世代の女性が、計画や予約などすべて手作りの欧州1週間のひとり旅を総額20万円以内で楽しむノウハウを、著者の実体験に即して綴るシリーズの続編だ。
「パリ・オペラ座観劇や名門ワイナリー巡りなど、カップル至上の欧州で、若くない女性が今さらひとりで行うには気後れしそうなことも、実はこんなに楽しく味わい深かったという6つの旅を、実践ガイドとしても役立ててもらえるようなエッセイにまとめました」
敬愛する作家・須賀敦子さんが愛したイタリア・トリエステを訪ね、彼女が著作に綴った旅情に自身の感慨を重ねたかと思えば、スペイン・アンダルシア地方で若者のようにひたすら路線バスを乗り継ぐ旅に興じてみたり。
「若い頃と同じ速度では歩けないし、いちいち老眼鏡が必要だし、モタモタしてしまうことも多い(笑)。でも、だからこそ出会える景色や人、発見や感慨もあります。若い頃の旅もよかったけれど、年を重ねた今も旅は驚きと出会いの連続で飽きることがありません」
旅の始まりは35歳。たまたま手にした税金還付金20万円でふと「旅に出よう」と思ったのがきっかけだった。息子が10歳になったことで子育てのひと区切り感もあり、半年の準備を経てユーレイルパスでヨーロッパを横断。経験も語学力もお金の余裕もないない尽くしの旅だった。
「最初は列車内で話しかけられた“Where are you from?”が聞き取れませんでした。ダメダメの連続です。それでも楽しくて、自分にはまだこんな力があったんだと思えました。海外ひとり旅に必要なものは語学力でも体力でもなく、それ以上に独りを楽しめる心と、困った時に周囲の人に『助けて』と言える力。結局、日常をそこそこ快適に安心して生きるのに必要なものと同じなんですね」
どの国のどんな街を歩いても、そこで生きる人々への共感と信頼に満ちたまなざしが印象的だ。
「街を歩き、バスや地下鉄に乗り、スーパーで買い物をしながら人々の日常に触れると、言葉や文化が違っても、自分と同じく誰もが一度きりの人生を精いっぱい生きていると感じて胸が熱くなります。だから旅の孤独感はあっても孤立感や疎外感はほとんどありません」
旅に出るたび、「人生がこれから始まるような気がする」という寺田さん。33回目の「始まり」の街はハンガリーの地方都市だそう。
KADOKAWA 1,350円
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