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『ママの人生』和田裕美さん|本を読んで、会いたくなって。

言葉は光。人生をよりよく導いてくれる。

わだ・ひろみ●京都府出身。23歳で外資系教育会社で営業の仕事に就き、試行錯誤の末、世界142カ国中2位の成績を収める。その体験を元に『世界No.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本』を上梓。これまでに出した本は50冊以上。

撮影・森山祐子

□親の介護に悩んでいる
□子育てで毎日イライラしている
□人生そのものに迷っている
□いま、自由だと言い切れない

これらの一つでも当てはまるなら、この小説を読んでほしい。きっと気持ちが楽になるから。

著者の和田裕美さんは、女性ビジネス書作家の先駆け的存在で、著書の累計発行部数は200万部を超える。そんな和田さんの初めての小説がこちら。スナックのママでもあった実母との関係をモチーフにした、自伝的な一冊だ。ただ和田さんの母は男のために1年も家を出るようなことはしなかったし、この本に出てくる母ほどには言葉巧みではなかったという。

「実話にデコレーションした感じですね。母がスナックのママだったのは事実ですし、本の中のエピソードのいくつかは実際に起きたことで、いくつかは私の頭の中での出来事。よく『主人公が勝手に動きだす』と聞いてなかば疑っていたのですが(笑)、本当にそうなんです! 登場人物たちが勝手に動きだすのが面白かったです」

本の中の “ママ” は実に自由。毎晩スナックで働くために娘たちの晩ご飯は用意していくものの(料理上手なママのご飯はいつもとても美味しそう!)、朝まで、下手したら昼まで帰ってこない。そんなママなのに孫が生まれたぐらいのタイミングで突然「母親宣言」をし、子や孫のためにとことん尽くしだす。……といったママのもとに育った娘は、いつしか営業の仕事に目覚め、大出世を遂げていく。その過程でママの言葉の影響力に気づくのだが、和田さん自身の経験に基づくだけあって、この小説でも言葉選びには心を砕いた。

「営業というとただ単に物やサービスを売ると思われがちですが、そんな簡単なことではない。何かを売るためには相手と仲良くなり、モチベーションを上げてもらう必要がある。相手への言葉次第でその人が変わっていく姿を目の当たりにし、 “言葉は光だ” と気づいたんです。いい言葉はその人の一歩先の足元を照らし、明るい未来に誘導する。ビジネス書ではそういうことをストレートに書いているのですが、この小説ではママとのエピソードを通じて、読んだ方の背中を押せたらうれしい」

どんなに失敗してもわずかなプラスのカケラを探して褒めてくれたママ。そしてその言葉を杖に人生を歩き続ける娘。繊細さや弱さのほうが肯定されがちな現代の風潮の中で、ママのまっすぐさこそが幸せを生むことに気づかされる。

ポプラ社 1,400円
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