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『続・下流老人 一億総疲弊社会の到来』藤田孝典さん|本を読んで、会いたくなって。

自分の努力だけでは、貧困は回避できない。

ふじた・たかのり●1982年、茨城県生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。著書に、『ひとりも殺させない』(堀之内出版)、『下流老人』(朝日新聞出版)、『貧困世代』(講談社)など。

撮影・水野昭子

20万部超えのベストセラー新書『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』に、文字どおり衝撃を受けた人は少なくないのではないだろうか。近い将来、日本の高齢者の約9割が貧困に陥る可能性があると訴えた本書から1年半。生活困窮者支援NPO法人の代表である著者・藤田孝典さんが続編を刊行した。

「前著の反響は予想以上でした。主な読者は50代から70代。多くの方が、自分と家族の生活と結びつけて考えてくれた。皆さんの漠然とした老後不安を、明確に炙り出してしまったとも言えますね」

けれど、前著のヒット以降、“下流老人にならないためには” のようなコピーで保険商品や投資を勧める書籍や広告が増えたことに、藤田さんは違和感を覚えた。

「不安を抱えた人が、貯金や投資といった自助努力のみに走ってしまうのでは状況は全く変わらない。そこを強調し、根本的な解決策を探るために続編を書きました」

老後の貧困を回避するためには三方向の方策が必要だと、藤田さんは本書を通して訴える。

「自分で備える以外に、近所づきあいや友人などのコミュニティを持つこと、社会保障を求めていくこと。自助、共助、公助の3つが揃って初めて充分と言える。日本社会は後者2つが明らかに不足しています。特に社会保障は先進国でも最低レベル。ある程度増税してでも、年金などの保障を手厚くすべきというのが僕の考えです」

さらに、現代の家族をめぐる問題も高齢者が下流化してしまう原因の一つだと指摘する。

「老老介護や介護離職の問題はもちろん、子ども世代の貧困が高齢者を圧迫することも。先日も、長時間労働でうつ病になった30代の息子を養う高齢の女性から相談を受けました。子どもの病気や離婚など想定外の事態により、備えをしていたはずの高齢者が一気に転落することもあり得る。だからこそ、介護や医療は自助や家族ではなく、社会が担うべきなのです」

自身の学生時代は就職氷河期。ホームレス支援のボランティアや非常勤のケースワーカーを務める中で、将来への不安が現実に迫ってきて、他人事ではないと感じた。

「以来、貧困に苦しむ人をどうしたら減らせるか、研究を続け今に至ります。貧困はもはや、自己責任ではなく社会問題。まずはそのことを多くの人に知ってもらい、社会の仕組みを変えるべく一緒に声をあげてもらえたらうれしい」

下流老人にならないためにいくら貯金し、何に投資すればいいかと、偏った方向に煽られていく社会に警鐘を鳴らしている。

朝日新聞出版 760円
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