本書の中の存在感のある野菜の写真を見ると、それだけで心を動かされる。農家の人たちはこうした力強くておいしい野菜を育てることはできても、うまく流通させるのは、また違う労力。高橋さんはそこを買って出て、私たちに知るチャンスを与えてくれている。レストランの軒先を借りて店頭販売するところから始めて、『種市』という古来種野菜のマーケットを開き、現在はネット通販のほか、新宿伊勢丹と銀座三越の野菜売り場でも取り扱いがある。
「種の大切さを知っている人を増やしたい。さらに買ってもらいたい。買うというのは、ひとつの選択。それが積み重なることで、社会は変わります。作る人、流通する人、食べる人、みんなが同じ目的を持てるといいなと思うんです。もちろん前提として、おいしいことが大切です。味がある、深みがある。くせがあるけど、それが旨味だと気づいてほしい。それを共有しながら買ってもらうことで、種は残っていく」