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『マ・ヴィ・ア・パリ 私のパリ生活』アスティエ・ド・ヴィラット|本を読んで、会いたくなって。

味わいある活版印刷の、美しいパリガイド。

デザイナーのイヴァン・ペリコリさん(左)とブノワ・アスティエ・ド・ヴィラットさん(右)が1996年に設立したブランド。伝統的な手工芸を継承した白い陶器、香料、文具など、多岐にわたるアイテムを、独自の審美眼のもと生み出している。

撮影・森山祐子

 白い釉薬のアンティークのような陶器が人気のアスティエ・ド・ヴィラットが、本を出したと聞いたのは昨年の6月。そのパリのガイド本は、閉鎖の危機にある活版印刷の工房を買い取り、出版社を立ち上げて作り上げたもの。陶器と同じように古き良き手仕事が生み出す魅力にあふれた本だった。

「その活版印刷の工房で、私たちのダイアリーを印刷してもらっていたのです。閉鎖されては、そのコレクションを維持できなくなります。それに、教養の高さと工芸的センスを兼ね備えた職人の技は、失われてしまうにはあまりに惜しい。そこで、私たちが後を引き継ぐことにしたのです」

 とは、アスティエ・ド・ヴィラットの2人、イヴァン・ペリコリさんとブノワ・アスティエ・ド・ヴィラットさん。

 フランス語版に続き、英語版も自らの印刷所で手がけた。でも、日本語版はそうはいかない。洋書に副読本を添える形にするなどの案もあったが、最終的に大日本印刷が保存していた鉛の活字を用い、不足している文字を鋳造することで、約400ページに及ぶ日本語版も活版印刷での出版を11月に実現。厚み部分の金付けも同様にほどこされている。

「紹介したのは、私たちが実際に通いなれているおすすめの場所。実際に便利帳として活用してほしいと思っています」

 まさにタイトルにあるとおり、個人的な生活に根差したセレクト。隠れ家的なカフェバーや、建物も見ごたえある図書館、アールデコ様式のプールなどのほか、腕のいい鍼灸師、歯医者、薪炭専門店、額縁職人といった思いがけないラインナップも。店主の人柄や訪れる客の描写も含む紹介文は、旅行者向けのガイドにはない想像を膨らませてくれる内容で、読み物としてもおもしろい。

「こんなに秘密のアドレスを教えてしまっていいの?と、よく聞かれるので驚いています。ここに紹介したような小さな店は、皆さんに知ってもらって繁盛すればそれだけ長続きできるでしょう? そうなれば、私たちも幸せです」

 活版印刷もお気に入りの店も、いいものには存続してほしい。2人の素直な温かい気持ちが詰まっている。なにより、手に取ってページをめくると、黒い文字と目の粗いモノクロ写真だけで構成された地味な本なのに特別感が伝わってくる。単なるデータとは違う、本の形で持つ喜びが、そこにはある。活版印刷の工房では、詩集や個人出版も請け負っているという。

「もちろん、私たちの第2弾も準備中ですよ」

エディション・アスティエ・ド・ヴィラット 8,000円(エイチ・ピー・デコ☎03・3406・0313)
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