8年間かけて世界中に散骨した母の友人、ロタ島に渡ってレストランを開き妻と死別した男、ヒマラヤの過酷な散骨に挑んだ大家族、旅の途中で客死した父親を見送った家族、インドで出会った友人を看取り、インドの川に還した装丁家……。5組の物語は、確かに自由奔放な生き方を全うした故人と、その家族や友人たちの深い愛情と絆に満ち溢れている。
「私自身、2005年に父が急に亡くなり、三周忌を機に父の故郷である福井の海に散骨しています。家族や友人家族なども交え、十数名で漁師である叔父の船上からワイワイとお祭りのように……。今もとても楽しかった思い出です」
’80年代までは「遺骨はお墓に」という社会通念が根強く、法的にも「死体遺棄」との境が曖昧だった。現在、自然葬への需要が高まるにつれ、「節度をもって行われる限り、罪にはあたらない」との見解が法務省から示されている。
「お墓を否定している訳ではありません。故人のためにこうしてあげたいと、それぞれの方法で供養している姿に共感を覚えたからです。故人の生き方や物語を、その人の死後も残ったものが紡いでいくって、素敵じゃないですか」