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『逆説の日本史22 明治維新編』井沢元彦さん|本を読んで、会いたくなって。

当分は健康に気をつけて書き続けますよ。

いざわ・もとひこ●1954年、愛知県生まれ。作家。TBS報道局記者時代の’80年に『猿丸幻視行』で江戸川乱歩賞を受賞。『週刊ポスト』で「逆説の日本史」を連載し、小学館のウェブマガジン『BOOK PEOPLE』で「逆説の世界史」も連載中。

撮影・森山祐子

「スタートしたのは26年くらい前ですから、34歳か35歳の頃です。卑弥呼の時代から書きだして、還暦を越えた今やっと近現代史に入ることができるのは非常に感慨深い。ここまで長期連載させてくれた『週刊ポスト』のおかげですね」

 シリーズ累計500万部突破の大ベストセラーである。四半世紀前に連載を始めた当時、歴史学は専門分野別の研究に偏り、史料第一主義に陥っていた。その弊害を指摘して始まった“目から鱗が落ちる”通史が『逆説の日本史』だ。

「同時代の文献や史料に論ずべきものが出ていない場合に、その事実は『なかった』とするのが史料第一主義です。後世の史料に書かれていることでも、それが論理的に見てありうることであるなら検討の対象になるというのが私の立場で、だんだん理解されてきました」

 山本勘助という戦国時代の軍師は後代の文献にしか登場しない人物で、同時代の史料がないため従来「いない」とされてきた。井沢元彦さんは論理的に検討して「いる」説を主張した。その後、勘助の存在を示す同時代の史料が発見されると歴史学は「いる」説に傾いた。

「残念ながら研究者のみなさんは悪い意味で専門家なので、時代を通して論理的に見ることに関しては非常に弱いですね。そのウィークポイントがあるから『逆説の日本史』に存在意義があります。歴史の専門分野に取り組む方も、通読すれば絶対プラスになります」

 特に見落としがちな点は何かと井沢さんに尋ねてみた。

「西洋にはキリスト教という底流があって、その影響で歴史が動いていますよね。日本にそういう底流がないかといえば、言霊とか穢れとか明らかに歴史を動かしている精神面の底流がある。それは宗教です。無宗教だと思い込んでいても、『縁起でもないことを言う』とか『禊を済ませる』と日常会話で口にするのは日本に独特の宗教の影響です。意識していない分、強い底流となって歴史を動かしていることが見落とされがちです」

 日本史を動かしてきた精神的な底流は、当然ながら近現代の日本の社会も動かしている。

「歴史は流れですから、上流で起きたことが下流に影響を与えます。近現代の日本の底流を明らかにするには、封印された『倭』の謎から聖徳太子の称号の謎、平安建都と万葉集の謎、穢れ思想と差別の謎、源氏勝利の奇蹟の謎など、順序立てて通史で謎解きする必要がありました。いよいよ日本の近現代史を書く準備が整ったわけです」

小学館 1,800円
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