「インドの製紙工場を訪ねたときも面白かった。おばちゃんたちがぺちゃくちゃしゃべりながら作業をしているのが気になって、もう少し合理的にできるんじゃないかと言ったら、『ただ紙を作るだけなら機械でもできる。人間の手で紙を作るのはぜんぜん違うことだ』。楽しく仕事して、生活の糧を得て、しかも昼寝ができなくちゃいけない(笑)。なるほど!」
「口琴(こうきん)という楽器を習っていたとき、先生になにげなくおすすめの音楽ありますか?と聞いたら、キミが今聴いている音楽を愛し、聴き続けなさい、と。『音楽という大きな海のなかで、一生のうちに私たちが聴けるのはせいぜいスプーン1杯ほど。でもそのなかにすべてが詰まっているんだよ。それを一生聴きなさい』。その先生は代々受けついだ楽器の仕事で、細々と暮らしている。小さな暮らしだけど、見ている世界はぜんぜん小さくない。びっくりしました」