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『フランスはどう少子化を克服したか』高崎順子さん|本を読んで、会いたくなって。

日本を考える鏡として読んでほしい。

たかさき・じゅんこ●1974年、東京生まれ。東京大学文学部卒業後、出版社勤務。2000年に渡仏後はライターとして活躍。「意識を変えるべき大多数はやはり男性たち。だからまずは現状認識から始めてもらいたい、と切に願います!」

撮影・鈴木大喜

「実は、この本は男性に読んでもらいたいんです。奥さんが買って読み終わったら、夫に渡してほしいし、息子にも読ませてほしい」

 渡仏16年、フリーライターの高崎順子さんは会社員のフランス人男性と結婚、2児に恵まれた。その子育ての真っ最中、保育園を経営する知人からフランスの保育園を視察したいと頼まれ、様々なリサーチをしたことが、本書誕生のきっかけとなったという。

「日本の友人たちに保育園どうなの? と連絡したら、持ち物リストがある。え、おむつ? おむつに名前を書く。しかも使用済みのものを返される。なんで? と」

 フランスでは、保育園は親が働くために存在するものという認識がある。補助金を交付しても子どものために使用されるかは調べようがない。となれば、子どもの面倒は政府が見ましょうという論理。けれど日本では働きに出ざるを得ない母親の代わりに保育園がある。

「そこには論理の隔たりがありますよね。だから使用済みのおむつを持ち帰れなんてことになる。けれど、かつてフランスも日本と同様に出生率下落の一途を辿っていました。日本はそのまま落ち続け、フランスは上昇した。ここ20年の出来事です。なぜフランスは少子化を克服でき、日本はできていないのか。実感のある今のうちに関係者の話を聞きたかった」

 資料をあたるにしても、引用文献は避け、一次資料のみを使用。さらにその資料が指し示す時期に当事者が何をどう考えたのかを知りたくてインタビューを重ねた。

「何もかも『フランスいいね』ということではない。それは実感としてありますし、伝えたいのは、フランスの制度のもととなる発想がどういったものであるかということ。鏡ですよね。フランスを通じて日本の現状を認識してほしい」

 男を2週間で父親にする/子供は「お腹を痛めて」産まなくてもいい/保育園には、連絡帳も運動会もない/ベビーシッターの進化系「母親アシスタント」/3歳からは全員、学校へ行く――本書の筋立ては、フランスの政策とロジックを紹介する。会社員の父親に与えられる3日間の出産有給休暇はお父さんトレーニングの第一歩。続いて11日間連続の「子どもの受け入れ及び父親休暇」は’02年の施行から浸透し、’12年には7割が消化したという。

「出産で大変なのはやはり女性です。そしてそれを一番身近で支えられるのは夫。男の産休は、父親としての自覚と責任を育む大切な制度で、家族にとっても重要な時間だったと私自身実感しました」

新潮新書 740円
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